【世界むかしばなし】15 あきらめなかった若者

【大紀元日本2月10日】「求める者は見つけ、戸を叩く者に扉は開かれる」という古い格言がアラブにあります。

ある若者が「この通りにやってみよう」と思い立ち、バグダッドに行って大臣に訴えました。「閣下、私は長年にわたり一人でつつましく暮らしてきましたが、そんな生活にうんざりしました。今まで真剣に何かを求めたこともありません。私の師は『求める者は見つけ、戸を叩く者に扉は開かれる』と毎日繰り返していましたが、今やっと、私は心から何かを求めようと決心しました。私の望みとは、王女を妻に迎えることに他なりません」

大臣はこの貧しい若者の頭はおかしいのではないかと思い、出直していらっしゃいと答えました。

若者は粘り強く毎日通い続け、冷たい扱いにも決して動じませんでした。ある日、若者がいつもの口上を述べているところに、王様がこの大臣を訪ねてきました。

王様はその突拍子もない要求を聞いて大変驚きましたが、若者の首を切り落とせと命じるどころか、からかいたい気持ちになって若者に話しかけました。「偉大な者、賢い者、勇敢な者ならば、王女をめとりたいと願うのに相応しい。だがおまえにその資格があるのかな? わしの娘と結婚したいのなら、優れた人格の者であるか、あるいは何か偉業を成し遂げた者でなければならん。大昔、計り知れない高価な宝石がチグリス川で行方不明になった。それを見つけることができたなら、わしの娘を嫁がせよう」

若者は王様の約束に満足し、チグリス川の岸辺に向かいました。そして毎日、小さな器で川の水を汲み出すのでした。それを何時間か続けると、ひざまずいて祈りを捧げます。川に住む魚たちは若者の根気強さにいつしか不安を感じるようになりました。そして若者がいつか川を干上がらせてしまうのではないかと心配になり、大会議を開きました。

「この男はなぜこんなことをしているのじゃ?」と魚の王様は問いただしました。

「チグリス川の水門に埋まっている宝石をさがしておるようです」と別の魚が答えます。

すると年老いた魚の王様は提案しました。「それではこうしよう。やつに宝石をくれてやろうじゃないか。もしやつの意志が固く、宝石を見つけるまでやめないと心に決めているのなら、間違いなくチグリス川の最後の一滴まですくい出してしまうじゃろう」

魚たちは恐ろしさのあまり、宝石を若者の器に投げ入れました。若者は褒美として王女を妻に迎えることができました。

固い意志で求めるものには、それなりの報いがあるのです。

(Ancient Tales of Wisdomより)

(出典:Fairy Tales from all Nations  Anthony R. Montalba作)

(翻訳編集・緒川)