法輪功迫害 アナスタシア・リン

「恐怖に屈しない」中国が入国禁止するミス・カナダ、米で会見

2015/12/20
更新: 2015/12/20

2015年ミス・ワールド世界大会の決戦が、中国の海南島三亜市で12月19日に開かれた。しかし、中国の人権問題を訴えてきたカナダ代表アナスタシア・リンさんは当局に入国を禁止され、出場を果たせなかった。リンさんは大会前日に米国ワシントンの記者クラブで会見を開き、人権問題を伝え続ける姿勢を示した。

経由地・香港で搭乗拒否

リンさんによると、11月26日に香港経由で海南島へ向かおうとしたところ、搭乗が許可されなかった。中国にとって「好ましくない人物(ペルソナ・ノングラータ)」に定められたため、入国が拒否されたことを明かした。

入国拒否の理由は、当局から伝えられていない。リンさんは、中国の人権問題を批判してきたことが要因だと考えている。

中国外務省の洪磊報道官は、11月の記者会見で欧米メディアから何度もリンさんの入国拒否に関して質問を受けたが、「提供できる情報はない」などとして発言を拒んでいる。

女優であるリンさんは、ミス・ワールド大会の出場については断念し、今後は映画やテレビで、中国共産党政権によって人権が抑圧されている問題への注目を呼びかけ続けると述べた。「恐怖に屈することはできない。中国で続く人権侵害に加担していることになる」と、人権活動を止めない姿勢を示した。 

中国出身のミス・カナダ

中国出身のリンさんは13歳のときに母親とカナダへ移住。トロント大学在籍中から中国の人権問題をあつかう映画やテレビ番組に出演してきた。

リンさんは、中国政府が「違法」と定め、警察が取り締まる気功「法輪功」の学習者であると明かしている。また、収容された法輪功の学習者から臓器が強制収奪されるという事件を描く映画『The Bleeding Edge(仮題:最前線)』のなかで、学習者の女性を演じている。会見では映画の出演が「入国拒否の一因にもなった」と推し測った。

記者会見の席には、来年公開の『最前線』の監督と並び、カナダのバンクーバーからリンさんの母親も出席した。

両親は離婚しており、父親は中国に住んでいる。リンさんは5月、カナダ代表に選ばれたことを父親に電話で伝えた。当時は喜んでいたが、数日後、一転して、リンさんに人権問題に沈黙するよう嘆願したという。政府から圧力があったとリンさんは推測している。

 自由と多様性の対極にある中国

ミス・ユニバースとミス・インターナショナルにならぶ世界3大美人コンテンテストの一つであるミス・ワールドのモットーは「目的のある美」。容姿の美しさにくわえて、道徳性や倫理観、社会貢献度が選考基準となる。人権活動を評価して、カナダの2015年ミス・ワールド選考委員は5月、リンさんを代表に選出した。

しかし、共産党の専制政治が置かれる中国では、リンさんは「好ましくない」と、正反対に位置づけた。

国際的な大会を開催する国として、リンさんは中国の態度を批判した。「2022年の冬季五輪に出場するために、少数民族や信仰者は、信条を放棄しなければ中国に入国できないのか」と問いかけた。

大会に出場できなかったリンさんは、1時間の会見の最後に、ミス・ワールドのカナダ代表として、現代社会が必要なことについて自身の考えを語った。「人は自分に忠実でいることが大切だが、恐怖や憎しみで、人の間に隔たりが作られている。宗教や人種の違いで隔たりを持つべきではない。お互いに思いやりを。(これを伝えるために)カナダ代表として出場した。この憎しみや恐れを、思いやりと慈しみに置き換えたい」。

 

 かつて中国の「優等生」だったミス・カナダ

リンさんはカナダに来て、中国共産党の思想支配と抑制を知ることになる。中国では「優等生」と評価され、共産党のプロパガンダ映画を上映したりしていた。

カナダで、文化大革命や六四天安門事件など、中国国内では知ることの出来ない情報を知り、自らの考えを変えていったという。

特に、法輪功の迫害を描いた映画『最前線』出演を通じて、弾圧の犠牲者の話を数多く聞いたことは、活動を続ける上で励みになったという。 共産党がもたらす孤独や恐怖、疑心をあおるなどの脅しに屈せず、良心に忠実であり続ける学習者の姿勢に感銘を受け、人権問題への発言を止めないことを決意したという。

1999年、北京の政治機関が集まる中南海で、本を読んだり、
座禅をしたりし、静かに抗議する法輪功学習者(明慧ネット)

法輪功とは

1992年、創始者の李洪志氏が公にした、気功を取り入れた精神修養法。心身の健康に効果があり、圧倒的な支持を得て爆発的に普及。中国政府の統計では、1999年には1億人に達した。

しかし1999年、当時の江沢民主席が、共産党員数7000万人を超えた法輪功の勢力を「脅威」とみなし、専制政治を揺るがすとの恐怖から、厳しい弾圧を始めた。

国際人権団体フリーダム・ハウスの情報では、これまでに数十万人が強制労働・収監され、拷問で数千人が死亡したという。

法輪功の情報を伝えるサイト「明慧ネット」によると、この弾圧で、法輪功を学ぶ本人のみならず、家族や友人、支援した人権団体や弁護士など、数百万人が社会的ないやがらせを受けた。特別警官の監視、理不尽な罰金、土地収用、失職、子どもに対する強制退学など。

いつでも入手できる臓器移植「無償のドナー」 収容所から

カナダの人権弁護士デービッド・マタス氏と同政府の元高級高官デービッド・キルガー氏は、収容されている法輪功学習者を生きたまま臓器を移植用に抜き取り、移植へ販売しているとの調査報告書を発表。2001年~2005までに、少なくとも4万1500人の法輪功学習者が強制的な臓器収奪で死亡したという。

キルガー氏は、中国当局は「まるで生け簀から新鮮なロブスターを取り出すかのように」、収容所の学習者から臓器を収奪したと発言。リンさんも11月に香港で開いた記者会見で「臓器移植ドナーと死刑執行の数を合わせても数万件の移植手術件数に満たないのはなぜか、中国政府に聞いて欲しい」と、臓器収奪の問題について訴えた。

(翻訳編集・佐渡 道世)

関連特集: 法輪功迫害