時事評論 文・中原

まかれた砂の求心力

2016/01/27
更新: 2016/01/27

台湾の総統選挙で、中国本土の人は多重の衝撃と啓発を受けた。ネット上では、中国人の素質や国民性、中国文化の優劣等を省みる議論が沸き上がった。

中国の民衆は昔から、「まかれた砂」と言われてきた。伝説上の三皇五帝の時代から夏・商・周までは、文化は相対的に一体化されていた。春秋戦国時代に至ると、百家争鳴の生起により、中国文化は思想から俗習まで多様化したするように変わった。異なる家族制度や宗族制度が加われば、諸国の文化がますます種々雑多になり、国民全体がよりいっそう「まかれた砂」化になっていった。

中国の歴史は分裂と統一の反復だ。その過程において、多民族による民族の大融合と共に、文化の大融合もずっとに行われてきた。それゆえ、中国文明文化は一見して雑然としているが、多種多様な文化を一貫して統一するものがあり、儒、釋、道という神髄だ。三者の共存と相互の影響により、中国文明史上で多彩で輝かしい文化が培われ、中国人特有な素養や品格が形成された。

史上で、「まかれた砂」論と共に、中国文化優位論もあり、中国人であることを誇る傾向が近代まで続いた。しかし、近代以降、欧州文明の衝撃を受け、従来の均衡が破られ、山河と共に文化思想もふたたび分裂状態になった。

清末から欧州の近代思想が中国に紹介され、五・四運動によって欧州近代思想への傾斜が深まった。ベルグソンやカントの他、マルクス主義と社会主義思想も取り入れられ、そして儒教をはじめ中国の伝統思想への批判も高まった。

孫文は伝統文化を礎に西洋文明の有益な部分を吸収し、彼の三民主義を人民的な民主主義思想に発展させた。

一方、毛沢東は中国伝統文化を否定し、マルクス主義を基に彼の革命理論を形成した。このように、西洋文明からの影響、そしてその受容方式の違いにより、中国は再度統一から分裂に追い込まれ、国民党と共産党、中華民国と中華人民共和国、台湾人と大陸人に分断された。

台湾の総統選挙は時代の鏡となり、両岸の現状を映し出している。台湾は中国文化を母体として、近代文明を立派に吸収し、共産党は外来の異種として伝統文化と優秀な近代文明をともに破壊してきた。

この選挙で本土の「まかれた砂」は明確な啓発を受けた。民主主義と国家統一の道に進もうとすれば、求心力を高めつつあの赤い壁を打ち壊さなければならず、他の近道はないのだ。

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