<心の琴線>妻を亡くして6歳の息子を叩く私

大人から見れば、子供の言動が不可解に思えることは、よくあることです。 仕事の忙しい父親と、不慮の事故で妻を亡くし6歳の子供を育てる、中国のあるひとり親家庭のお話しを紹介します。母親を恋しく想う子供が、身を裂くような悲しみをどのように対処しているのか。自身の辛さもさることながら、父親の抱える悲しみをも想う姿勢に心揺さぶられます。
妻が4年前に事故による不慮の死を遂げ、私と息子の二人だけの生活になった。
息子の世話や毎日の食事の支度に疲れ果て、仕事もうまくいかないことがよくあった。家事もうまくこなせない私と息子を見て、あの世で妻は悲しんでいるだろうか。私は父親役と母親役をうまく演じられず、何度も挫折感を味わった。
ある日のこと。夜遅く家に帰った私は、疲れ果てて食事を作る気力もなく、スーツを脱いですぐにベッドに身を投げだした。その時、「パン!」という音がして、赤い汁とラーメンが飛び散り、シーツと布団が汚れてしまった。
布団の中に、インスタントラーメンが置いてあったのだ。
なんて子だ!と怒った私は、部屋を出て、おもちゃで遊んでいる息子のお尻を叩いた。あまりにも腹が立ったのでひどく叩きすぎた。そのとき、泣き出した息子が私にこう言った。
「炊飯器の中のご飯は朝、全部食べちゃったんだ。夜ご飯は幼稚園で食べたんだけど、パパがいつまで経っても帰って来ないから、インスタントラーメンを見つけて、シャワー室の熱いお湯で作ったの。パパがガスは使っちゃいけないと言ったから。ひとつは自分が食べて、もうひとつはパパに残しておいたんだ。インスタントラーメンは冷めたら美味しくないから、パパが帰るまでお布団の中に入れておいたの。おもちゃに夢中になって、パパに言い忘れてた。ごめんなさい」
息子の話に涙がこぼれた。それを隠すためにトイレに入り、蛇口を開いて思いっきり水を流しながら号泣した。しばらく心を落ちつかせてから、まだ泣いている息子を慰め、傷ついた彼のお尻に薬を塗って寝かしつけた。汚れたシーツと布団を掃除し終わった後、息子の部屋のドアをこっそり開けて様子を見ると、彼は母親の写真を手に握りしめたまま泣いていた。
私は、立ったまましばらくそれを眺めていた。
それ以来、私は母親の役割をもっとうまく演じようと心に決め、多くの時間をかけて息子の世話をするようにした。1年後やっと、幼稚園を卒業して小学校に入学する時期を迎えた。幸い、この間あった出来事は息子の心に影を落とさず、彼はのびのびと成長してくれた。
しかしある日、私はまたも息子に手を出してしまった。
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