大紀元時報
中国伝統文化百景

「女媧」人類創造の女神

2018年03月18日 17時00分

権威ある史書『史記』三皇本紀に、女媧が土を捏ねて人を造ったことに関する記述はなく、のちに述べる他の功績が記されている。ただ、周知のように、この『史記』三皇本紀の部分は、司馬遷が執筆したものではなく、唐の司馬貞がその補いとして書いたものである。つまり、女媧の土を捏ねて人を造った話は、司馬遷の時代になかったか、司馬遷が故意にその部分を外したか、あるいはその記述が失われたかなどが考えられる。

しかし、この神話は民間で古から代々語り継がれていたことは確かである。たとえば、屈原は『楚辞』天問の中で「女媧を立てて帝としたのは、誰が導いてあがめたのか」「女媧の不思議な体を、誰がそれを制作したのか」と問う。このことから、遅くとも屈原の戦国時代に女媧に関する伝説がそうとう広く伝えられたことは明らかである。

 有神十人、名曰女媧之腸、化為神。(『山海経』大荒西経)
 神あり、十人、名は女媧の腸、化して神となる。

上記の記述は古書で見られる女媧に関するもっとも早いものである。「化」は、化育することであり、化生することである。盤古が万物を化生したように、女媧も人間を化生したのである。この「化」の一字で、優れた繁殖力をもつ神聖女として女媧の不動の地位が確立されたと言っても過言ではなかろう。そして、ここにある「腸」とは、一般的意味で言う腸ではなく、お腹や女性の生殖器官を指すものとも考えられる。

女媧の「腸化為神」という伝説より、土を捏ねて人を造ることが民間で代々語り継がれ広く知られている。

俗説天地開闢、未有人民、女媧搏黄土作人。劇務、力不暇供、乃引縄絙于泥中、挙以為人。(『太平御覧』)

天地が開闢したときには人がまだいなかったので、女媧が黄土をまるめて人を造った。しかし、きわめて劇務であったのに、力を費やす暇がなく、縄を泥の中で引き回し、引き上げて人を造った。

古人にとって、土は器を作るためのもっとも基本的素材であるし、そして天を父とし、地を母とする中国文化の視点からすれば、この神話はかなり合理的なものである。

一方、「乃引縄絙于泥中、挙以為人」、すなわち、女媧の人類創造は一人ずつ造るのではなく、縄を泥に引き回して、これを引き上げることによって、大量生産をしたことである。ここの縄は、普通の意味で言う縄ではなく、男根のことであり、ふるい落とされた泥のはねが精液であり、そしてこの行為は男女の交尾を暗示するという説(何根海『女媧引縄為人之謎的文化破解』、『民間文化』2000年第11-12期)もある。

この解釈は興味深いものであるが、しかし、神話誕生の時代背景や古人の思想に即すれば、どうやら牽強付会(けんきょうふかい・自分都合のいいように強引に理屈をこじつけること)のようであり、それより素直に読解した方が順当であると思われる。なぜならば、女媧は、疲れて力不足と感じて手動の代わりに縄という道具を使って量産するようになっただけであり、人間創造の材料である泥や人間創造の基本的な環境や条件などは一切変わっていないからである。

                                                   (文・孫樹林)

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