大紀元時報

【子どもに聞かせたい昔話】調理場のプーカ

2019年02月07日 22時50分

昔々、アイルランドに裕福な商人が住んでいました。あるとき彼は仕事で長い旅に出ることになりました。

主人が留守の間も召使いたちは普段どおりに仕事をしていましたが、彼らをおびえさせることが起こりました。みんなが寝静まったあと、ドアがバタンと閉まる音やお皿がガチャガチャいう音が調理場のほうから聞こえてくるのです。

ある夜、召使いたちは遅くまで寝ないで、この不思議な物音は幽霊の仕業ではないかと話しこんでいました。下働きの少年は、その話を聞きながら、調理場のぬくもりの残るかまどの上で、うとうとと眠り込んでしまいました。

召使いたちがみな寝に行ってしまい、かまども冷えてきた頃でした。突然調理場のドアが開き、ロバに似たプーカと呼ばれる妖精が入ってきました。

少年は驚きと恐怖で青ざめながら言いました。「ボクを食べないで」

プーカは少年をちらっと見ましたが、何ごともなかったかのように大鍋に水を満たし、かまどの火でお湯を沸かし始めました。そして少年をつかんで、彼の目をじっと見つめてから、かまどの下に降ろしました。

お湯が沸くと、さっそくプーカはお皿や調理道具をぜんぶ洗って、棚の決まった場所にしまい、床を磨きました。そして、少年の横に座って片耳をぴんと立て、にっと笑い、かまどの火を消して去っていきました。

少年はあっけに取られ、一体何があったのか理解できずに、ただそこにひとり残されていました。

次の朝、少年が仲間にプーカのことを話すと、ひとりの怠け者が言いました。「そりゃあいいや。片づけはプーカがやってくれるのなら、おれたちは働かなくてもいいってことだよな」すると別の召使いが言いました。「あんた、頭がいいねえ」こうしてその日、召使いたちは調理場を汚れたままにしておきました。

朝になると、予想どおり調理場はきれいに片づけられ掃除されていました。召使いたちはうまくいったと味をしめて、もう誰も後片づけをしなくなりました。

ある夜、別の少年がプーカに会うために寝ないで待っていると、夜遅く、調理場のドアが大きく開きました。少年は叫び声をこらえ、勇気をふりしぼってたずねました。

「きみは誰? どうして毎晩ボクらのかわりに仕事をしてくれるんだい?」

「おいらは昔、お前さんのご主人さまの父親に仕えていたのさ。他のやつらと同じように部屋も食事ももらっていたけど、仕事が嫌いで一番の役立たずだった。いよいよおいらが死ぬって時、まじめに働かなかった罰をくらっちまったのさ。ロバの妖精となって、調理場の片づけと掃除をして、夜は家の外で寝なくちゃならない。掃除はなんてこたあないけど、冬の夜の寒さはこたえる。毛布でもあったらいいけどなあ」

「かわいそうに。何かボクらにできることはある?」

「もしも上着があったら、長い夜も、ちっとはましになるかもしれんなあ」

「そんなのおやすいご用さ。いつもボクらの代わりに働いてくれるからお礼をしたかったんだ」

次の日の夜、少年は暖かい毛糸の大きなセーターを持ってきました。プーカはとても喜び、鏡に映して満足そうに自分の姿をながめました。

「ありがとう、やっと楽になれそうだ。本当にうれしいよ。じゃあ、さよなら」

「どこに行くんだい? まだ片づけが終わってないよ」

「今度はお前さんらの番だ。おいらの罰は、誰かが仕事のお礼をしてくれるまでと決められていたんだ。やれやれ、ようやく終わったよ」

こうして召使いたちのずる休みは終わりました。彼らはプーカにお礼をするのが少し早すぎたと悔やんだのでした。

(Ancient Tales of Wisdomより)

(翻訳編集・緒川)

 おすすめ関連記事:【子どもに聞かせたい昔話2】 藍染めの桶に落ちたジャッカル

 

関連キーワード

関連特集

^