【ほっこり池】ソロバンの話

 渋沢栄一(1840~1931)は今日の埼玉県深谷の出身。

 生まれたのは天保11年2月13日、これを西暦に直すと1840年3月16日になります。渋沢翁が、91年の生涯にのこした業績は膨大なものですが、なかでも有名なのは著書『論語と算盤』(1916)で道徳経済合一説を説いたことです。

 今の若い方や子どもさんたちは、実用の場でソロバンをはじいているのを見たことがないでしょうね。およそ50年前、電卓が安く普及する以前は、職場の主役はソロバンだったのですよ。子どもは学習塾よりも珠算塾へ行かされました。私も3級です。

 算盤という言葉は、ときに「計算高く利己的」という負の語感でつかわれましたが、渋沢翁は「仁義道徳あっての富である」と説き、高潔な精神の象徴に算盤を掲げました。

 ソロバンの、見事な名誉回復でした。

(慧)