【寄稿】LGBT理解増進法が作る恐ろしい未来 長尾敬氏

2023/05/10
更新: 2023/05/10

LGBT関連法案問題を改めて簡単に整理してみます。

2年前自民党の中で、LGBT理解増進法という法案(自民党了承案)が自民党の機関決定を持って了承されておりました。対して、超党派のLGBT議連においては、LGBT差別解消法という法律案(議連案)が出来上がっておりました。

この法案の違いは、前者には、「性同一性」という概念を持って、「差別はあってはならない」という記述がされております。性同一性とは、生まれながらの身体的な特徴と、心の中の性別が一致せず、悩んでおられる方について、例えば、医師等が性同一性障害だと認定するという概念です。後者においては、「性同一性」ではなく、「性自認」という概念が使われています。これは、身体が男性であっても、自分は心が女性だと、自分自身が認めればそれで女性として認められるという概念です。第三者が認定するのではなく、自分が認めれば性自認認定は完結するのです。このような性自認を根拠とした差別は許されないとする法案が議連案だったのです。

この2つの案に関連して合意案が作られました。当時議連の役員であった稲田朋美衆議院議員が、自民党案の中にあった性同一性という言葉を削除し、自民党案をベースに性自認の概念を中心とした合意案を了承してしまったのです。「冗談じゃない!こんな合意案には賛同できない!」これで自民党内は大騒ぎとなりました。侃々諤々の大議論のこの合意案は先送りされ、LGBT議論はフリーズされたのです。この時、誰よりも議論にストップをかけたのは他ならぬ安倍晋三元総理でした。生来の女性の人権と安全を守るためには、絶対にこの合意案を成立させてはならないと思っておられたからです。私たちもこれにこうして全力で反論しました。

ところがまたぞろ、この議論が再燃したのです。米国から法律を成立させようと指示を受けた岸田総理が、自民党内の推進派に声をかけ始めたからです。

今年2月ぐらいまでの報道は、法案の問題点について、合意案にある「差別はあってはならない」という表現、超党派議連案にある「差別は許されない」という表現、この違いが争点であると不正確な報道がされていたのです。 マスコミは推進派ですので、こういった争点隠し行っていたのです。

先ほども説明したように、最大の争点は、「性同一性」とするのか、「性自認」とするのかこの点であります。 ようやくこの重要な争点が議論されるようになってきました。しかしまだまだ不足です。 相変わらずマスコミはまだ争点隠しを続けています。

歌舞伎町の商業施設の2階にあるジェンダーレストイレが報道され始めました。男性の小便器は男性用として設置されているものの、大便器等は女性用のものと混在しているのです。 要は女性がとても使えないようなトイレなのです。 既にネットでは、男性が利用している様子が写真に撮られており、女性が使える状態にありません。

報道では、「このトイレ、誰も使いたくありませんよね。 特に女性の方は。」などとコメントしているのですが、議論はそこで止まるのです。 なぜこのようなトイレが設置されているのか、その根拠を示さず、次の話題に移っています。 まさに争点隠しです。 このようなトイレが設置されている根拠は、まさにLGBT法案議論です。

欧米は、LGBTの方々に対して非常に差別的な意識を社会が持っており、これを是正するために法律が作られました。 しかし、日本は古くからLGBT(当時はそういう表現はしておりませんでしたが)に対しては寛容であり、法律を作る必要のない社会風土を平安時代から持っています。 欧米では法律を作ったことにより、生まれながらにしての女性たちが大変な危機に晒される事件が多発しています。

LGBT法が成立した国々では、性自認を根拠とした差別が許されていませんので、レイプ事件を起こした男性囚人が自分はトランス女性だと性自認したことにより、女性刑務所に収監され、そこで女性囚人をレイプする様な事件が多発しています。 スポーツの世界においても、男性としては全く上位には食い込めなかったスポーツ選手が、トランス女性として女性競技枠に入り金メダルを獲得しているなど事例が出てきているのです。 女性選手はたまったものではありませんよね。

理解増進法が成立していない現在では、例えば公衆浴場に男性が女に入浴した場合、現行法で処罰されます。身体で区別しているからです。しかし、理解増進法が成立すれば、その中に「性自認を根拠とする性差別は許されない」とされているので現行法が改正され、トランス女性が女湯に入ってきたことを止めた人が処罰されてしまうのです。性自認を社会が拒めないのです。

4月2日と5月1日、女性団体、LGBT当事者団体が記者会見しました。LGBT理解増進法を推進している人たちは、LGBT活動家であり、LGBTの代表者ではないというご主張でした。多くのLGBT当事者の皆さんは、この法律は必要ないとおっしゃっておられます。性的マイノリティーの中に分断を生んでしまうこともその1つです。例えば、レズビアンの世界にトランス女性(身体は男性器をつけ、心は女性だと性自認する人)が入り込んでくる事案に困惑をされておられました。日本にあるゴールドフィンガーという老舗のレズビアンバーに外国のトランス女性が入店し、これを拒んだことがきっかけで、世界から差別糾弾され、謝罪に追い込まれたというのです。

そんな社会を作る法律が作られようとしているのです。 そんな法律をなぜ日本で作ろうとしているのか、その理由が報道されません。

はっきり申し上げると新しいビジネスが生まれるからです。だからそのビジネスの利権にあやかろうとする者たちが、法案の推進に熱心なのです。 理解増進という概念は、広く世間に周知徹底しろということです。 官民問わず、あらゆる組織において、啓蒙活動のための資料作成や配布、ときには、講座などを開くという新たなビジネスが生まれるのです。 この旗振り役を買って、日本の大手広告代理店が背後で激しく動いております。さらには日本において、NPO法人や、一般社団法人等の形を借りて、啓蒙活動のビジネスが展開されます。 そこに補助金が導入されるのです。 こんなにおいしいビジネスはありません。 ここに左翼活動家が新しい資金源としてワル乗りしているのです。

これの流れを利用しているのは、駐日米国大使のエマニュエル大使です。 米国では、連邦法としてのLGBT法案は成立しておりません。 13州で州法として成立しておりますが、その一方で23州で反LGBT法が成立しています。 それ以外の州ではまだ議論は送られています。この点も報道されていません。

エマニュエル大使はこの事実を隠しながら、日本に対してLGBT法を成立させろと内政干渉を堂々と行ってきています。 米国で反対しているのは共和党です。LGBT法が成立すると、生来の女性たちの権利よりも、LGBTの権利が強大なものとなり、犯罪を誘発させ、女性たちが危機に晒されるからという理由です。しかし、民主党であるエマニュエル大使は、自身の出世のために、自分が日本においてLGBT法を成立させたというお手柄が欲しいだけなのです。その結果、日本がどんな国なろうと知ったことでは無いのです。

日本の社会を壊したい左翼活動家たちと、ビジネスで儲けたい勢力と、エマニュエル大使の思惑が合致し、この問題を進めているのです。 現在、「性自認」を「同一性」と置き換え、「差別はあってはならない」に、“不当な”の3文字を付け加える修正案が浮上しております。しかし、もはやこの修正案すら必要ありません。わが国にLGBT理解増進法は必要ないのです。

長尾敬
前衆議院議員、元内閣府大臣政務官。立命館大学卒業後、明治生命(現・明治安田生命)保険相互会社に入社。平成21年に初当選し、衆議院議員を3期務める。著書に『永田町中国代理人』(産経新聞出版)、『シン・ニッポン2.0 ふたりが教えるヒミツの日本』(三交社、共著)、『マスコミと政治家が隠蔽する中国』(眞人堂)。
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