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6月2日、5月の米雇用統計が市場予想を下回ったことを受け、市場ではFRBが利上げ休止を真剣に検討する段階に入ったとの見方も。写真はバーナンキFRB議長。先月3日撮影(2006年 ロイター/YURI GRIPAS)

米経済にスタグフレーション懸念、FRBはジレンマに

2日発表の5月の米雇用統計が市場予想を大幅に下回ったことを受けて、市場では連邦準備理事会(FRB)が利上げ休止を真剣に検討する段階に入った、との見方が強まっている。エコノミストの間では、米経済のスタグフレーション(景気停滞とインフレ進行)の可能性が高まっているとの見方が出ており、FRBが利上げを継続するのか休止するのかをめぐり、様々な議論が行われてきた。

 今回の雇用統計が、6月28─29日の連邦公開市場委員会(FOMC)に決定的な影響を与える可能性もある。

 5月の非農業部門雇用者数は7万5000人増となり、エコノミスト予想の17万5000人増を大きく下回った。雇用増加幅は昨年10月以来最低。

 3月、4月の雇用増加幅も下方修正され、過去6カ月間の雇用増加数は平均14万5833人と、前月から5万人以上減少した。

 ハイ・フリークエンシー・エコノミクス(ニューヨーク)の米国担当チーフエコノミスト、イアン・ステファードソン氏は「(利上げ)局面の最終段階に入った。FRBは景気に悪影響を与える前に利上げを停止するだろう」と予想した。

 5月の雇用統計によると、時間当たり賃金は前月比0.1%増にとどまり、エコミスト予想の0.3%増を下回った。賃金インフレに対する懸念が和らぐ可能性もあるが、失業率は4.6%と6カ月間連続で5%を下回り、約5年ぶりの低水準となった。

 雇用統計を受け、シカゴ商品取引所(CBOT)のフェデラルファンド(FF)金利先物市場では、6月の利上げの確率が42%に低下。6月利上げの確率は、5月31日公表のFOMC議事録(5月10日分)を受けて、一時80%まで上昇していた。

 みずほ証券(ニューヨーク)のエコノミスト、グレン・ヘイバーブッシュ氏は「雇用統計を受けて、6月のFOMCで金利据え置きが決まるとの確信が一段と強まった」と指摘。

 雇用統計前日の1日に発表となった5月の供給管理協会(ISM)製造業景気指数、4月の住宅販売留保指数、週間新規失業保険申請件数も、軒並み弱い内容となった。

 BNPパリバの北米担当チーフエコノミスト、ブライアン・ファブリ氏は「(1日発表の指標)は、経済のほぼすべて分野で経済活動が低迷していることが浮き彫りになった」と指摘。

 「雇用統計で経済の勢いが大幅に鈍っていることが分かった。今後数カ月さらに大幅な景気減速が予想される」と述べた。

 シカゴ地区連銀のモスコウ総裁などは、インフレの高進に懸念を表明しているが、インフレ指標は遅行指数であるため、インフレ圧力が強まっている局面でも、FRBが利上げ中止を決断することも考えられる。

 6月のFOMCで重視されるとみられるのは、6月14日発表の消費者物価指数(CPI)をはじめとする5月の物価統計。

 FRBが注目する物価統計である個人消費支出(PCE)価格指数は、FOMC翌日の6月30日の発表となる。

 グリニッジ・キャピタル・マーケッツのチーフ・インターナショナル・ストラテジスト、アラン・ラスキン氏は「雇用統計の内容から見て、5月のCPIコア指数上昇率が0.2%以下なら、6月の利上げを見送ることが可能だろう」と発言。

 「CPIコア上昇率が0.3%であれば、利上げを迫られる可能性が高い。そうなれば、市場はハードランディングのシナリオを視野に入れるだろう」と述べた。

(ロイター6月2日=シカゴ)

 (06/06/05 16:12)  





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