印刷版   

【物語】日本の神芝居:「老人と桜の樹」

 【大紀元日本7月1日】日本の有る所にある男が流れつき棲み付いた。元々、村人とは面識がなく余所者であるため、誰も相手にせず、男は村の端にみすぼらしい庵を結び、痩せた土地を耕しては、自分一人分の食い扶持を上げる晴耕雨読の生活を送っていた。

 男は或る時、天に向かってつぶやいた。「ああ、淋しい、誰か助けてくれないか?もっと周囲が賑やかであれば・・・」すると、数日して見知らぬ老人が訪ねてきた。見ると、手に小さな苗木を持っている。「それは何の木ですか?・・・」男が尋ねると、老人はそれには答えず「私を呼んだのはあなた・・・最初は楽しく・・・末節には・・・」とだけ言い残し、苗木を男に渡すと静かに去っていった。

 男は訳もわからなかったが、兎にも角にも老人の苗木を植え、大切に育て数年が過ぎた。すると、春には満開の桜花を見るようになり、村人の間で瞬く間に評判になった。村人たちは、男と伴に酒を酌み交わし、帰りにはお礼にと農具やら苗木やら栽培技術などを置いていったので、男は知らぬ間に裕福になっていった。

 そんな万事順調な或る日、噂を聞きつけた村長が娘を連れて男の元にやってきた。娘の器量を見て有頂天になった男は、分をわきまえず、再び天につぶやいた。「どうにかしてあの娘を私のものにできないか・・・」。しかし老人は、再び男を訪れない。男は立派な新居があれば、娘が輿入れすると思い、新居を改めることにした。

 しかし、村には立派な新居を建てるための梁とする樹木がなく、男ははたと困った。「どうしたら梁を調達できるか?」・・・見ると、眼前に堂々と育った桜の樹がある。男は意を決すると、桜の樹に斧を入れ、一思いに切り倒すと梁にして新居にしてしまった。

 ほどなくして村長の娘が輿入れし、男が幸せな日々を送っていた時、くだんの老人が訪ねてきた。「桜の樹はどうした?」・・・男はくだんの経緯を話し、幸せな結婚ができたことを報告し、老人に感謝の意を述べたが、老人は首を振りながら、「人に天の数あり」とだけ言うと、また静かに去っていった。

 老人が去ってからしばらくして、イナゴの害、日照りの旱魃等の天災が相次いで村を襲い、夜盗まで発生して、村は存亡の危機を迎えた。村長は男の元に来て、また相談した。「どうしようか?」・・・男は残った切り株に目を遣り、「では臼を作って餅をつき、それを天日で干して保存食をつくりましょう」と進言すると、残りの切り株を地面から引き剥がしてしまった。

 村人が最後に希望を託して餅をついている最中、今度は中央から官吏が来た。「税収として、この餅は中央が徴収する」。そう言うと、官吏たちは村のなけなしの餅をすべて持ち出した。あくる年も、またあくる年も村から天災が去ることはなく、娘と離縁した男はまた放浪の旅に出ることになったという。

 (06/07/01 22:07)  





■関連文章
  • 【物語】殺生の罪を知る、心優しき兵法家が編み出した「天下泰平の活人剣」(06/06/28)
  • 【歴史物語】一人前の男とは何か(06/06/24)
  • 中国共産党演義(06/05/29)
  • 米研究者脳内に肥満抑制物質を発見(06/03/25)
  • 分相応(06/02/08)
  • 【子供のしつけ】:曽子が豚を殺す(05/11/07)
  • [物語]二個のたまご(05/09/08)
  • [-物語-]見知らぬ人(05/08/28)
  • [-物語-] 父の物語(05/08/20)
  • 韓国時代劇「大長今」が香港で人気を集める(05/05/17)
  • 新年の物語---餃子の話(05/02/16)