印刷版   

日本経済は正常化へ、デフレ脱却に着実な進展=経済財政白書

 与謝野経済財政・金融担当相は18日の閣議に2006年度年次経済財政報告(経済財政白書)を提出した。日本経済は「『平時の経済』に復帰しつつある」とし、長期にわたったデフレ状況について「今後、デフレ脱却に向けた着実な進展が続く」として、脱デフレに一段と踏み込んだ。

 白書の副題は「成長条件が復元し、新たな成長を目指す日本経済」──。小泉政権の5年間、経済財政白書は「改革なくして成長なし」の副題を踏襲してきた。2002年に始まる景気回復が5年目を迎え、経済が構造調整を通じて「正常化」に回帰しつつあることを映して、白書も「新たな成長」に向けた指針を示す内容となっている。

 白書では日本経済は「今後も景気回復が持続する可能性が高い」とし、景気動向をみるうえでの留意点として、従来から指摘してきた原油価格高騰の影響、世界経済動向に加え、今後の金利上昇の影響を挙げた。 

 ゼロ金利での経済活動に適応してきた各経済部門に対して「プラスの金利復活」への対応を求めた点が特徴的。金利上昇の企業収益への影響について「景気回復と足並みをそろえ上昇幅が緩やかなら限定的」としながらも、「金利上昇が円高を通じて企業収益に与える影響について、慎重に考慮する必要がある」と白書は警告している。

 <景気回復が持続する可能性は高い>

 白書では、日本経済の現状について、2005年央に踊り場的状況を脱した後、「消費、投資、外需のバランスがとれた景気回復を続けてきている」と分析。企業部門と家計部門の健全化が進み、世界経済も順調に回復が続くなかで、「今後も回復が持続する可能性が高い」としている。

 「原油価格の高騰は大きなかく乱要因である」としながらも、(1)原油価格上昇が世界的な経済成長に伴うもので収益圧迫効果を需要増加の効果が相殺している、(2)日本も含め各国とも悪性のインフレ圧力が抑制されている──ことなどから、「これまでのところ景気回復を阻害するほどの影響はみられない」とした。

 ただし、原油価格は先週来、中東情勢の緊迫化から上昇傾向が再燃しているが、白書はそれ以前にまとめられている。

 <景気回復長期化で、「歪み」が蓄積する可能性に留意必要>

 景気回復は4月にバブル景気(51カ月)と並び、戦後最長のいざなぎ景気(57カ月)に迫ろうとしている。白書では、デフレ下で景気回復が長期化した背景を分析する一方で、景気回復の長期化により経済の一部に「『歪み』が蓄積し、それが次なる景気循環を引き起こすという事態は避けなければならない」と、バブルの可能性にも警鐘を鳴らしている。

 足元「設備投資はおおむね経済全体の成長率と整合的であり、在庫についても全体としては安定している」が、白書では、「各産業とも生産能力の拡大に踏み出しつつあるなかでは、需要と生産のかい離が生産調整を大きくする可能性があることには留意する必要がある」としている。

 そのうえで、白書は今後の景気動向をみるうえでの留意点として、(1)原油価格高騰の影響、(2)世界経済の動向、(3)今後の金利上昇の影響──を列挙。

 原油価格の上昇は「今後も継続する可能性が高い」としながらも、世界経済に与える影響は今のところ、限定的とした。世界経済については「順調な回復を続けている」とする一方で、米国の経常赤字問題を指摘。「今後、世界的に金利が上昇していくことが見込まれるなかで、引き続き世界の資金がアメリカに安定的に流入していくのかどうか、そうした資金の流れが変化した場合にどうなるか注意が必要」としている。

 <デフレ脱却に向けた着実な進展続く>

 「今後はデフレ脱却に向けた着実な進展が続く」──。白書は政府・与党の公約である今年度中のデフレ脱却に自信を示した。

 このうち、消費者物価指数(CPI)や内需デフレーターなど、物価の基調をみる経済指標は好転した。物価を取り巻く環境をみても、GDP需給ギャップは2005年10−12月期には約8年ぶりにプラスに転じ、ゼロを上回る局面に入った。供給面から物価との相関関係をもつ単位労働コストの下落幅は依然としてマイナスの伸びが続いている。「今後、賃金面での上昇が続けば費用面からの物価押し上げ要因となる可能性がある」と指摘。GDPギャップや単位労働コストといった物価を取り巻く環境は、「少なくともデフレが悪化するリスク要因とはなっていない」と分析した。

 これらを総合的に判断し白書は「物価が持続的に下落する状態を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがない状況、すなわちデフレからの脱却が視野に入ってきた」とした。

 ただ、消費者物価の上昇ペースが極めて緩やかなものにとどまっていることや、8月のCPI基準改定で0.2%─0.3%程度下押しされる可能性などがあることから、デフレ脱却の判断では物価上昇の程度を見極めていく必要がある、としている。

 <日銀には実効性ある金融政策運営を期待>

 また、白書は、「デフレからの脱却が視野に入りつつあるなかで、日本経済が物価安定のもとでの持続的な成長を実現していくために、引き続き政府・日銀一体となって取り組みを行うことが必要である」とし、日銀に対しては「市場動向にも配慮し、実効性ある金融政策運営により引き続き金融面から確実に経済を支えていくことが期待される」とした。

 <経済の正常化、金利上昇には留意必要>

 また、白書は「デフレ脱却は経済の正常化現象としてその実現が強く期待されている一方、それに伴う、経済環境の変化にも留意が必要」と、本格的な金利上昇局面への留意を求めている。

 白書は、デフレが払しょくされた通常の世界では「金融政策も正常化し、正の水準の金利が復活することになる」と指摘。「これまで日本経済の家計、企業、財政などの各部門は長期間にわたりゼロ金利の環境での経済活動に適応してきただけに、今後は金利上昇を踏まえた対応が求められる」と警告した。

 金利上昇の企業収益に与える影響については「金利上昇が景気回復と足並みをそろえたものであり、上昇が緩やかな程度にとどまれば、利払い負担の増加による企業収益への影響は、売り上げ増加などによって吸収可能」とした。ただ、「金利上昇が円高を通じて収益に与える影響も慎重に考慮する必要がある」と警告している。

 また、金融機関への影響について「(金利上昇による)債券含み損も同様に貸出金利上昇による期間収益拡大や株価の含み益によって相殺することも考えられる」としながらも、「これらに期待できず、自己資本が十分とはいえない先については大幅な金利上昇に注意が必要」とした。

 内閣府試算によると、1%ポイントの金利上昇によって、企業部門全体では約3.1兆円の金利負担増、家計の純利子所得増加は約6兆円となる見通し。また、財務省試算によると、1%ポイントの金利上昇で国債の利払い費は2007年度で1.6兆円、2009年度では4.0兆円増加する見通し。

(ロイター7月18日=東京)

 (06/07/18 11:24)  





■関連文章
  • 6月銀行・信金総貸出は前年比+1.7%(06/07/10)
  • 社会保障の安定財源確保、消費税の目的税化を示唆=財政審の論点整理(06/06/15)
  • 緩和的な金融状況が当面は維持され得る=日銀副総裁(06/06/06)
  • 日本経済回復、長期金利上昇(06/05/05)
  • 日銀「量的緩和政策」を解除;中国通貨当局に警鐘(06/03/15)
  • 北京日朝国交正常化交渉の裏側(06/02/13)
  • 麻生外相、対北経済制裁を視野に(06/02/12)
  • 日朝国交正常化交渉、4日北京で再開(06/02/05)
  • 日本:日経平均株価は下半期で50年ぶりの最大値上げ幅(05/12/31)
  • 李登輝前総統:台湾は必ずしも独立する必要はない(05/10/23)