「いつも体が重い」慢性疲労の悩みを漢方が解決します

「いつも疲労を感じている」「どれだけ寝ても疲れがとれない」。

そんなお悩みをお持ちの方も、多いと思います。十分に休息をとっているのに疲れがとれず、「寝ていても疲れる」という人さえいます。
そうした慢性疲労の原因は何でしょうか。漢方医学の観点から、疲労の原因と治療法についてお伝えします。
 

慢性疲労「5つの原因」

慢性的な疲労感の原因として、考えられるものを5つ挙げます。

1、胃腸の問題
胃腸の状態がよくないと消化不良になり、体全体に疲れを覚えさせます。
冷たい物を食べることによって引き起こされるほか、先天的な胃腸虚弱による場合もあります。

単なる冷えから来ている場合は、生姜(しょうが)をスライスして鍋で煮た「生姜湯」を飲むと改善できます。ただし、胃に熱をもった人は、しばらく飲むことを控えてください。

2、肝臓に疾患がある
漢方医学の観点からいう肝臓疾患とは、西洋医学とは異なり、「肝臓だけの不調」とは見ません。つまり肝臓疾患は、血液、筋脈、消化器系、情緒、目などの各方面に関係する病なのです。
肝臓病がなぜ疲労を引き起こすか、主な理由は次の3つです。

第1に、五行思想の「木克土(木は土に克つ)」という原理から「肝臓は脾臓に勝る」とされています。
肝臓が不調になると脾臓に影響を及ぼすため、食欲不振、腹痛、腹部膨張など消化器系の問題が生じます。
消化に不可欠な胆汁の分泌も正常でなくなるため、全く食べられなくなるのです。
第2に、肝臓の不調により貧血を起こしやすくなること。
第3に、肝臓の機能が低下すると「脾臓虚血」となり、睡眠によって十分に休むことができなくなり「寝たはずなのに寝不足」という状態になります。

3、「腎虚(じんきょ)」になる
腎虚とは「腎臓の機能低下」のことですが、必ずしも腎臓の疾患とは限らず、膀胱、腰部、下肢、子宮、卵巣、生殖系統も含めた広い範囲における不調を指しています。
加齢による腎虚は、頻尿になることのほかに、「疲れやすく、根気がない」も典型的な症状です。

4、風邪の症状からくる疲労感
いわゆる風邪の各症状が、肩や首、背中に痛みとなって現れるほか、体力を消耗させて重い疲労感を覚えさせます。

5、熱中症
猛暑の夏に起こりやすい熱中症ですが、体内に熱がこもって放出できない特殊な状況になれば、夏以外の季節でも熱中症による重大事故は起こり得ます。
特に乳幼児からは目を離さないようにしてください。

熱中症も、だるさ、脱力感、脈拍微弱、頭痛、めまい、肩こり、腰痛など風邪に似た症状を覚えることがあります。
激しい疲労感のため、かえって自身が熱中症であることに気がつかず、適切な対応が遅れることがないよう注意が必要です。
 

かっさ」と「カッピング

患者の病状と原因を見極めた上で、漢方医は、最も適切な方法によって治療に当たります。漢方医が考える疲労解消の選択肢のなかに、かっさ(刮痧)とカッピング(拔罐)があります。

かっさは、背中や肩などの皮膚面に対して、水牛角などで作った特殊なヘラを使って、体内の老廃物や悪い血液を「削る」ように掻く療法です。痛そうに見えますが、実際はさほど痛くはなく、すっきりとした心地良さが得られます。

また、日本語で「吸い玉」とも呼ばれるカッピングは、同じく背中や肩などの皮膚のツボの位置にガラス容器を吸い付けさせ、皮膚を吸引させる療法です。

この二つの方法は、いずれも漢方独特のもので、血行促進や代謝促進および体内老廃物の排出を主な目的としています。

★(写真)カッピングは、背中や肩などの皮膚のツボの位置にガラス容器を吸い付けさせ、皮膚を吸引させる療法です。

臨床例として、昨年9月30日、87歳の老婦人が家族に支えられて当院へ来られました。

普段はとても元気で、何でも自分でできる女性でしたが、数日前から力が抜けて、自分の足で歩けなくなりました。

めまい、疲労感、脱力感、食欲不振などの複数の症状があるといいます。

西洋医の病院で検査を受けましたかと聞くと、「受けました。しかし、いろいろ検査をしても原因が見つかりませんでした」とのこと。

私が脈をとって診断したところ、風邪と熱中症の症状が診て取れたので、漢方の風邪薬を3日分処方するとともに、「かっさ」と「カッピング」による治療を行いました。

かっさを女性の頸部の周囲に、カッピングを両肩の肩井(けんせい)というツボに施術したのです。
体調が回復するまでは、体を冷やさないため、冷たい食物と瓜類は食べないようにご本人に伝えました。

その後、女性の容体は徐々に回復し、3度目の来院となった10月8日には、脈は正常で、
精神面も以前の健康な状態に戻っていました。

まだ少し体力の回復が遅れているようでしたので、胃腸を健やかにする漢方薬を処方し、体力をつけるため鶏肉スープをとるよう伝えました。
(文・李應達/翻訳編集・鳥飼聡)