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3月7日、2月の利上げ決定に唯一反対票を投じた岩田日銀副総裁が物価先行きの不確実性に強い懸念を示した。昨年11月に代表撮影(2007年 ロイター)

2月利上げ反対の日銀副総裁、物価先行き不確実性を懸念

 2月の利上げ決定に唯一反対票を投じた岩田一政日銀副総裁は7日、新潟市内で行った記者会見で、物価先行きの不確実性に強い懸念を示した。午前の講演では、淡々と執行部の見解を説明していたが、午後の会見では、政策委員のひとりとして、その見解に「異」を唱えた格好だ。

 講演の冒頭、岩田副総裁は「日銀執行部の一員として説明させていただく」と断り、2月利上げの背景や経済・物価見通しを説明した。「決まった措置を執行していく過程においては、一丸となって行っていく」(福井俊彦総裁)との言葉通りの行動と言える。2月利上げに反対した最大の要因だった物価の先行きも「原油価格低下の影響がはく落するにつれて、再び緩やかな上昇傾向を示していく」との見通しを示した。

 日銀は、2月金融経済月報で、消費者物価指数(CPI)についての見通しを「目先、原油価格反落の影響等からゼロ近辺となる可能性がある」と修正。昨年末まではマイナスになる可能性は低いと見ていたものの、年初からの原油価格下落を受けて、目先2―3カ月を見た場合、一時的にマイナスもあり得るという状況を明示した。

 2月の利上げ決定は、当然、こうしたCPIも見通した上での判断だ。先行きを見た場合、原油価格が2月以降やや上昇したことが4月以降のCPIに反映されるほか、年度替わりでサービス価格の改定が予想されることなどから「マイナスの動きは一時的」(幹部)とみている。さらには、秋以降、原油価格下落の影響がなくなることで、CPIのプラス傾向は明確になるとの見方だ。

 2月利上げに踏み切った際、多くの日銀幹部は、7―9月の個人消費の落ち込みは一時的で、2%成長路線が確認できたことを理由に挙げた。利上げに賛成した政策委員を含め日銀は、1%台半ばの潜在成長率を上回る2%成長を続けることで「基本的に需給ギャップが需要超過方向に向かい、物価の方向としては緩やかに上昇していく」(水野温氏審議委員)という見方だ。 

 しかし、岩田副総裁は、物価の先行き見通しに「多々の不確実性がある」と指摘する。賃金・消費の弱めの動きが払しょくされていないことやIT(情報通信)中心に生産面での軽度の調整の可能性を指摘。さらには、需要超過にあるとする需給ギャップは幅を持ってみる必要があること、需給ギャップが需要超過でも物価感応度が低下している可能性があること、賃金に上昇が見られない中で単位労働コスト(ユニットレーバーコスト)面からの物価押し上げの力が働かないことなどを列挙。「丹念に分析する必要がある」と慎重な姿勢を示した。

 執行部の見解を説明した午前の講演で唯一、岩田副総裁の意見らしきものが垣間見られたのは、「物価安定の理解」に関する記述だ。日銀は「物価安定の理解」をゼロ―2%と提示しているものの、ゼロ%の物価達成を目指しているわけではないと明言。「委員の理解の中央値は大勢としておおむね1%前後で分散していることに留意すべき」と述べている。中長期で1%に向かっていく力が働いているか―――。ここに力点を置いて物価の状況を点検している岩田副総裁は、こうした力に疑問符が付く以上、政策に対するスタンスは慎重だ。

 岩田副総裁は、08年度までの経済・物価見通しを示す4月末の展望リポート後でも利上げは遅くなかったとの見解を表明した。4月に向けて、各政策委員は、08年度までの経済・物価シナリオを固める作業に取り組む。岩田副総裁が懸念する「物価」は、原油価格に左右される部分ではなく、ベースの動向だけに、4月展望リポートまでに「不確実性」の霧が晴れなければ、日銀としてのシナリオ策定が難航する可能性もありそうだ。

[新潟 7日 ロイター]

 (07/03/08 08:59)  





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