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暗殺されたブット氏を追悼するためにろうそくを捧げるパキスタン人民党の活動家ら=2008年1月3日、ラホールで(Arif Ali/AFP/Getty Images)

ブット元首相暗殺が残す疑惑=ムシャラフ政権と中国の関係

 【大紀元日本1月5日】パキスタン元首相ベナジル・ブット氏の暗殺は、世界中を震撼させ、各国首脳は事件を即座に非難した。暗殺報道は米国株市場下落とドル安をもたらし、原油と金価格が急騰した。パキスタン全土にわたり、反政府デモが起こり、怒りの抗議と暴動はムシャラフ大統領の辞任を迫った。

 ムシャラフ軍事政権の野党指導者として、ブット氏は専制政治に替わる民主の象徴であった。危険を顧みず、パキスタンの民主化に身を捧げた。同氏の大いなる勇気と使命感は、ビルマのアウン・サン・スー・チー氏のような民主化を指導する女性たちを想起させた。インドのシン首相に、ブット氏は、大きな影響を残したように、普通の政治指導者でないと言わしめた。パキスタンとともに、長年の紛争と緊張を経てきたインドの首相にとって、ブット氏の民主化への献身は両国の関係に好ましい影響を与えるのは明らかである。

 インドとパキスタン両国がそれぞれすぐれた女性指導者生み出したことは、歴史の偶然の一致である。政治家として、ブット氏の波乱の経歴は、ジャワハルラール・ネルーの娘、インディラ・ガンジーとよく類似している。インディラ・ガンジー氏もインド首相を二度務め、暗殺された。インドのガンジー家とパキスタンのブット家は、米国のケネディー家に似ていると言えよう。政治手腕から見れば、ガンジー氏は「鉄の貴婦人」と言われ、ブット氏は「鉄の蝶」と呼ばれた。さらに、二人とも息子がいるが、暗殺されるまで政治にはかかわっていなかった。ガンジー氏の暗殺ではさまざまな見解があったが、その人気は亡き後も強まるばかりだ。パキスタン首相を二度務めたブット氏は夫の汚職疑惑で二度辞任に追い込まれたが、暗殺されたことでガンジー氏のような伝説の人となった。

 ブット氏暗殺事件の調査はパキスタン政治の将来に大きな影響を与えるかもしれないが、事件の真相は明らかにされない可能性がある。それは、暗殺の動機には多くのものがあるというだけでなく、暗殺の背景に複雑な利害関係が絡んでいるからである。ムシャラフ政権と米国は、アルカイダの犯行とみている。しかしながら、アルカイダはそのような殺害には関しては堂々と認めているが、今回は公に否定している。米国はパキスタンの民主的な選挙を支持しているが、ブット氏とムシャラフ大統領の共同政権も歓迎していた。本件の国際的な独立調査には、米国の支持がなければ適切には行われないだろう。それでも、ブット暗殺をアルカイダとするのは、ブッシュ政権の反テロ対策の主張を支えるものとなり、共和党大統領選キャンペーンにも有利に働く。ブット氏の暗殺はムシャラフ大統領にとって有害無益であるが、同大統領が疑惑を逃れられない理由が4つある。第1は、ブット氏の電子メールに残された手がかりであり、第2は、ムシャラフ政権がブット氏の死を巡って矛盾する声明を出した。第3に、ブット家とパキスタン人民党(PPP)の直観、第4は、ムシャラフ政権が、ブット氏が保護を繰り返し求めていたのにもかかわらず守ることができなかったことである。これらのことから、ブット氏暗殺をテロリストに着せることは、状況の安定化に向けての単なる格好の口実のように思われる。

 興味深いのは、この件に関する中国共産党政権のあいまいな立場である。世界各国とは違い、中国政府の首脳はブット氏暗殺についてなんらコメントを述べていない。さらに、中国メディアはブット氏の過去の汚職嫌疑を大々的に取り上げ、暗殺されるのは自業自得であると想起させるもの。首相在任中のブット氏は中国政府の同盟者であったが、暗殺後、中国は自らの政治目的のためにブット氏を売ったのである。しかし、それは驚くにあたらない。中国政府とムシャラフ政権は両者とも全体主義の利害関係から手を組んでおり、ブット氏が政権を握った場合、民主化を進めるブット氏の影響力に脅威を抱いていたのである。中国政府は、天然ガスパイプライン計画や、大陸間弾道ミサイルや核兵器技術などの軍事協力など、パキスタンには多くの既得権益がある。しかも、中国は、パキスタンを戦力的に利用してインドや米国に対抗するのがねらいだ。

 ブット氏暗殺をきっかけに、パキスタン政治関係は変化した。PPPはブット氏の息子を党の新総裁に指名した。しかしながら、ブット氏は死後も国民の全体主義反対の共通認識に影響を与えており、世界中の民主化運動の堅固な触媒として作用している。

(文・李天笑、翻訳編集・月川)

 (08/01/05 14:45)  





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