【お勧め本】毛沢東は生きている ー-中国共産党の暴虐と戦う人々のドラマ 上・下巻

【大紀元日本5月11日】

ソ連邦時代のロシアジョークを中国版にアレンジしてみた。

日本人と中国人が言い争いをし、日本人がこう言った。

「日本には言論の自由がある! 我々は銀座のど真ん中で、大声で日本の首相の悪口が言える!」

中国人も負けずに言い返した。

「中国では言論の自由が完全に保証されている! 我々は天安門広場のど真ん中で、拡声器を大音量にして日本の首相の悪口が言える!」

改革開廟xun_ネ来、中国経済は高度成長を続けている。大都市では高層ビルが林立し、ハイウェイや高速鉄道網が整備され人々の暮らしは一変した。

しかし、毛沢東時代と変わらないタブーがある。それは中国共産党を批判することだ。

著者のフィリップ・P・パン氏はニュージャージー州出身の中国系アメリカ人。ワシントンポスト紙・北京支局長として2000年より8年間中国に滞在。取材制限のある中、足しげく取材地へ出向き、本書で紹介された人々と信頼関係を築きながら面談を重ねた。本書を読むと著者の取材対象者に対する誠実な態度が伝わってくる。それが、この本が良質のルポルタージュとなった理由だと思う。

上下巻の本の中で、「共産党幹部」「映画製作者」「女性活動家」「工場労働者」「新興成金」「医師」「ジャーナリスト」「弁護士」「盲目の人権活動家」が登場する。「新興成金」以外は、タブーに挑戦した人々のドキュメンタリーとなっている。読み進むうち、彼らの勇気に感服し、そして身の危険を心配するようになる。

第9章「新聞記者」では南方都市報の、共産党との戦いとその結末が描かれている。事実を報道しようとするだけなのに、日本ではとても考えられない血の報復が待っている。中国のジャーナリストの、勇気ある行動には本当に感心させられる。

南方都市報については大紀元の記事をご紹介する。

http://www.epochtimes.jp/jp/2010/12/html/d69851.html

第2章「林昭の魂を求めて」では、毛沢東時代の女性活動家・林昭の生涯を記録に残そうと奔走するドキュメンタリー映画製作者・胡杰(こけつ)の苦闘が描かれている。

林昭の経歴については、本文より引用させていただく。

【林昭は、1950年代に北京大学で学んだ才能豊かな詩人兼作家で、南京近くの運河の古都、蘇州で生まれ育った。毛沢東の反右翼運動の際、全学生の中で彼女一人だけが、政治告白を書くことを拒否した結果、非妥協的な態度を取ったかどで懲役刑となり、文化大革命時に死刑の判決を受けた彼女は、獄中で血書という秘密の遺産を遺している】

林昭は、1968年に36歳の年齢で銃殺刑に処せられた。処刑後、林昭の母親の家に一人の巡査が訪ねてきた。

巡査は母親に「林昭さんのお母さんですね。あなたのお嬢さんの活動は押さえられました。弾丸の費用5分(フェン)を払ってください」と言った。

母親はすぐには何のことかわからず、呆然としながらも5分(フェン)を渡した。そして巡査が立ち去ったあと何が起こったのかやっと悟り、床に泣き崩れた。

中国共産党は、自分たちに反抗した勇気ある人を射殺し、その銃弾の費用を母親から徴収したのだ。なんと冷酷で残忍なことか。

本書を読めば、現在においても中国共産党を批判する人は毛沢東時代と同じような危険に遭うことが分かり、慄然とする。

天安門広場のど真ん中で、大声で国家主席の悪口を言える日はいつ来るのだろうか・・・。

書名  毛沢東は生きている ー-中国共産党の暴虐と戦う人々のドラマ 上・下巻
著者  フィリップ・P・パン
出版社 PHP研究所
価格  上下巻とも 1,680円(税込)年 2009年9月
ISBN  上巻9784569770987

   下巻9784569770994

(佐吉)