【大紀元日本12月1日】台湾のためにスパイ活動をしたとして起訴されていた中国生物科学者の呉維漢氏が11月28日朝、死刑執行された。呉氏の遺族と国際特赦組織及びオーストリア、米国政府などが呉氏の死刑執行は透明性のある公正な司法審理を経ていないことを糾弾している。ラジオ自由アジア(RFA)が伝えた。
呉氏の娘である陳然(音訳)さんは、オーストリア大使館を通じ父親が同日朝、死刑となったことを知らされたと話している。ロンドンに本部を置く国際特赦組織の声明では、呉氏が弁護士もつけてもらえず有罪となったこと、呉氏の量刑が公平な審判を経ていないことが伝えられている。陳然さんは呉氏が法廷上で罪状を認めたことを撤回している事を公表しており、中国政府の父親に対する取り調べの過程は不透明で、起訴ははっきりとしたものではないとしている。また数年来の家族の面会要求も拒否され続けていたことも明らかにしている。報道によると、この1年、オーストリアと米国の駐中大使館が中国政府に対し呉氏の家族の要求である全面的な合法審査を呼びかけていたという。11月27日、中国外交部スポークスマン秦剛が「呉維漢は中国の法律に違反した。親族が外国人であっても別の処理方法を採ることは出来ない」と伝えた。
RFAによると駐中国米国大使館の広報官は、呉氏に対する死刑執行に対し深い遺憾の意と不安を表した。また、呉維漢氏は中国政府が正式に判決を下す前に、得られるべき法律援助を得ることができていなかったと認識しているという。
このことに対し中国労改基金会の執行主任である呉弘達氏は、呉氏の例は中国司法制度の欠陥を反映したものだと見ている。
「呉氏の件は非常に重要な事例であり、中国は平和に発展しているようだが、こうした案件を処理する司法体系に多くの欠陥がある。実際、裁判官が決定するのではなく、党が判決を下している。中国の現行の法律には68の罪状があり、死刑判決もある。1949年から現在までのおよそ60年間、死刑執行数は公表されていない。これは恐らく全世界の風潮に相反する方向に向かっており、許されないことだ」
北京の黎雄兵弁護士も中国司法の透明度問題についての見方を述べている。
「中国は死刑執行に対し、執行過程中も含めた司法の透明度と司法の公開性方面が不十分だ。公開審判の透明性や死亡書の発行に情報封鎖問題が存在しているばかりではなく、基本的な死刑執行や死刑判決の登録も秘密にされているのが現状だ。この方面はさらに長い道のりが必要だ。死刑判決の審判、判決文書の公開も不十分な点が多い」
オーストリア在住の生物科学者・呉維漢氏は2005年に北京で逮捕され、台湾のために情報収集したとして当局に起訴された。その中の機密漏えいという項目で呉氏は中国の高級官僚の健康に関する情報を台湾に伝えることが可能であるとされている。これに対し娘の陳然さんは、いわゆる軍事情報は中国の図書館の公開閲覧で全て得ることができる上、判決書に使用された“可能”の文字が当局の呉氏に対する起訴は確定性に欠けると考えている。
(翻訳・坂本)
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