がんや脳卒中のリスク増大「今日から、歯周病を予防しましょう」

歯周病は慢性病の一つです。歯の脱落を招くだけではなく、心臓病認知症がんなどの多種の慢性病と高度に関連すると考えられます。2つの方法でプラークを抑制することにより、歯周病のリスクを効果的に減らすことができます。

歯周病は脳卒中を誘発し、胃がんリスクを50%増加させる。

一見するときれいに見える口の中にも、実は各種の細菌が歯の表面についています。歯磨きなど口腔の清掃が十分に行われていないと、歯の表面、歯間、歯肉の縁に細菌が蓄積し、歯垢や歯石ができます。また、炎症を起こして歯の周囲が萎縮し、歯周病を引き起こします。

歯周病の一般的な症状は、以下の通りです。
1、歯肉が腫れて、歯を磨くと出血する。
2、歯肉が退縮し、歯根は露出するため敏感になる。
3、口臭がひどい。歯間が広がり、食事の残滓がたまりやすくなる。
4、歯肉が下がって、歯が長くなる。噛む力が減退。歯がぐらつき、抜けやすくなる。

悦庭歯科医院の主任、王巍穆医師によると、歯周病の重症患者のなかには、くしゃみをしただけで歯が落ちた例もあるといいます。
王医師は、「歯周病が進んで、咀嚼する力が弱くなると、食物を十分に噛み砕きにくくなります。そのぶん胃腸に負担がかかり、消化吸収に影響するのです」と言います。
つまり、歯ぐきの状態が悪くなると、肉や繊維の多い野菜など、硬いものを食べることができなくなります。そこで栄養摂取が偏って、他の病気に罹りやすくなるのです。

さらに恐ろしいのは、歯周病によって細菌が血中に入り込み、他の臓器にダメージを与えることです。王医師は、歯周病が急性心膜炎を引き起こす可能性を指摘し、「これは心臓に与えるダメージは非常に大きく、深刻な病気です」と述べます。
歯周病は、心血管や脳血管疾患とも密接に関連しており、歯周病患者が脳卒中になる確率が高いことを指摘した研究論文が、米国心臓協会より発表されています。

さらに、歯周病は脳にもダメージを与える可能性があります。
林新病院脳神経内科の主治医である林志豪氏によると、「脳をつなぐ神経血管を通って、口腔細菌が脳に影響を及ぼします。そこで異常なタンパク質を生み出し、神経細胞を破壊して脳を退化させます。これは認知症に発展するのです」と言います。
また、歯垢が血流に乗って眼球の内部に入り、目の痛みや失明に至るケースもあり、最悪の場合、死亡のリスクさえあります。
 

健康な歯と歯周病の歯の違い。(Shutterstock/大紀元製図)

がん発症率と歯周病の関連性

国際的に有名な英国の医学雑誌『British Medical Journal』は2020年に、ハーバード大学でのこんな研究を発表しました。
それによると、「歯周病の病歴がある人は、食道がんのリスクが43%増加する。胃がんの場合、歯周病の病歴がない人に比べて、歯が抜けなかった歯周病患者のリスクが50%増加。歯が1本以上抜けた人のリスクが68%増加した」と言います。
歯周病患者が膵臓がんや大腸がんに罹りやすい原因として、少数の口腔細菌の関与が指摘されています。

歯周病になる原因は、通常1つだけではありません。以下は一般的な要因です。
第一に挙げられるのは「適切でない歯磨き習慣」「合っていない義歯」「間違った治療方法」など、今日からでも改善できる要因です。
その次に、生活習慣やその他の要因にも関係した「免疫力の低下」「飲酒・喫煙」「糖尿病」「低栄養」「加齢」などです。
これらの要因は、いずれも歯周病になったり、歯周病を悪化させる可能性があるため十分な注意と、改善努力が必要です。

これらに加えて王巍穆医師は、「歯を磨く時に力を入れすぎる」「いいかげんに何回か磨くだけで済ませてしまう」「マウスウォッシュを使い過ぎる」なども原因に挙げています。
使用者に合っていない義歯も、歯周病の原因になります。
王巍穆医師は、「清潔を保ちやすいという理由から、できるだけ歯が連結した義歯ではなく、1本ずつの義歯を選ぶことをお薦めします」と述べています。
 

使用者に合っていない義歯は歯周病の原因になります。(Shutterstock)

力を入れすぎるブラッシングや、過剰にマウスウォッシュを使用することは、歯茎にとって結果的に良くありません。以下の2つの方法は、歯周病を有効に予防します。

一、毎日正しく歯を磨く
歯ブラシの毛先と歯茎の角度を45度にして、一度に2、3本ずつ軽く振動させて磨きます。歯ブラシを持って、大きく行ったり来たりさせると、むしろ歯ぐきを傷つけて萎縮させてしまいます。
食後に正しく歯を磨き、さらにデンタルフロスや歯間ブラシを使って、歯と歯の隙間を掃除するようにします。

マウスウォッシュは、歯磨きの代用品にはなりません。マウスウォッシュの過剰使用は、歯の染色、味覚の変化、口腔粘膜への過剰刺激、または唾液分泌に障害をもたらすこともあり、また口腔乾燥をまねくこともあります。
また、ある研究によると、抗菌性マウスウォッシュの過剰使用は、かえって口腔の正常な細菌叢のバランスを破壊するとともに、良い細菌まで殺し、口腔環境の健康に影響を与えると言います。王医師は、「マウスウォッシュは週に1~2回使う程度で十分です」と述べています。
 

マウスウォッシュの使いすぎは口腔の健康に良くないため、週に1~2回使用すれば十分です。(Shutterstock)

二、定期的に歯科検診を受け、歯の洗浄を行う
半年ごとに歯科医院で検診を受け、歯の洗浄をしてもらいましょう。
検診は早期発見、早期治療ができるチャンスです。普段から、「歯を磨くときに血が出る」「歯の隙間が大きくなる」「歯が長くなる」などの兆候があれば、早めに歯科医に診てもらうことで歯茎が回復する可能性も出てきます。

歯肉を保護するこの2つの方法に加えて、日常生活において「飲酒や喫煙をやめる」「夜更かしをしない」「いびき症状があれば治療する」などを総合的に実施することにより、歯周病を効果的に予防することができます。

(文・蘇冠米/翻訳編集・鳥飼聡)