幻の名機だった?米軍がオクラ入りさせた5機体

米軍に最も好まれているのはどのタイプの戦闘機でしょうか?性能の面はその一因に過ぎません。米軍は戦闘機のコストと必要な機数(ニーズ)の間でバランスを取る必要があるため、航空史上、多くの高性能戦闘機は実際、軍に採用されなかったのです。

例えば、米軍は500機の戦闘機を派遣してある任務を完成させる時、高性能戦闘機を300機有することはそれほど重要ではなくなるのです。国防官僚は性能、コストとニーズの間のバランを考えて予算を組み立てなければなりません。

つまり、米軍は最も高性能戦闘機を100機購入して、残り400機は安くて任務をやり遂げる性能さえ揃えば、ステルス性能がなくてもよいという考えなのです。

高性能戦闘機が米軍に使われないもう一つの理由としては、この高性能がその国のニーズに合っているかどうかという問題があります。

下記の5種類の戦闘機は試験飛行の段階で終わっていて生産ラインまで上がらなかったものの、もし仮に服役までできて、量産していたら、米軍の歴史が書き換えされ、人々が信じられないような、独特の性能を発揮したことも可能だったでしょう。

1. YF-23:猛威に戦闘に出向かう

初めて採用され服役してからの15年の間、ロッキード・マーティン社製のF-22ステルス戦闘機にはもはや敵はなく、常に空域を制覇してきました。しかし、1990年代になってから、F-22の試作機であるYF-22が天敵のYF-23に出会ったのです。

「YF」型とは戦闘機の試験飛行機であり、実際には服役しないない戦闘機のコート名です。その中の「Y」とは「プロトタイプprotype」の意味を示し(X系列の戦闘機と異なる系列の意味を含む)、当局の認可を得られた試作機であることを意味しています。多量生産することになるとその番号が「F」系列(Fighter:戦闘機)に変わり、正式な戦闘機系列になります。米軍の戦闘機はずっとこのルールで名付けられています。

YF-23「ブラックウィドウⅡ(戦術機)」は先端的高性能戦闘機(ATF)であり、競争入札のために米ノースロップ社とマクドネル・ダグラス社が共同で設計し開発したモデル機です。その性能は競争相手のロッキード・マーティン社のYF-22よりも優れていました。しかし、最終的に米軍は1991年4月23日にYF-22が入札に優勝したと宣言したのです。そのため、YF-23はたった2機の試作機で終わり、現在は飛行していません。

2機のYF-23試作機は二つの異なるエンジンを使用しています。1号機はプラット・アンド・ホイットニー社の F119を使用しており、1990年の第一回のテストでは1.43マッハ数(時速1716キロ)の速度で巡回飛行しました。2号機の試作機はゼネラル・エレクトリック社のYF-120を採用しており、テスト飛行では1.6マッハ数(時速1920キロ)の速度に到達して、YF-22の1.58マッハ数を超えています。

米軍はYF-23を選ばなかった理由を公開していませんが、ロッキード・マーティン社はその活力と戦闘能力で魅力を発揮し、飛行機の飛行角度やミサイル発射の能動性で勝ち取ったと思われます。YF-23も同様な性能を持っていますが、飛行のデモンストレーションはしませんでした。

2. 21世紀に向けたASF-14「トムキャット」

ASF-14(先進型攻撃戦闘機)の「トムキャット」計画は斬新的な高度進化し全く新しいタイプの戦闘機F-14の試作機に当たります。新しく改善された電子制御システムや、更なる効率、飛行距離など、全面的に能力・性能がアップグレードされた試作機でした。

ASF-14は6万ポンドの推進力を持っていて、優れた推進力(空気圧)の制御と大規模の内部燃料貯蔵能力と巨大な有効負荷容量(輸送容量)を持っています。また強大な空中レーダーシステムと多数のセンサーポッドを持っていて、第四世代の戦闘機の代表作でした。

しかし、ASF-14計画は実現されませんでした。米海軍の長期的視点から見るとASF-14はあまりにも高価なため、最終的には「Boeing F/A-18E/F Super Hornet」(マクドネル・ダグラス社(現ボーイング社)が開発したスーパー ホーネット機)を採用したのです。

3. YF-12:史上最大かつ最速戦闘機

ロッキード・マーティン社(Lockheed)のSR-71 ブラックバード(Blackbird)は冷戦の時は最も代表的な、シンボル的な戦闘機の一つでしたが、実はSR-71の前にもっと高速で、もっと上空まで飛ばせるA-12試作機と、A-12を基礎にしたYF-12の要撃機のプランもありました。

つまり、YF-12はA-12偵察機のプロトタイプで、SR-71偵察機の研究開発はYF-12から来ています。したがって、これらの機種の外形は類似しています。

A-12に比べ、YF-12の最大の違いはパイロット席がシングルからダブルになっていることと、専用レーダーオペレーターとミサイルランチャーを装備していることです。一度に3発のAIM-47Aファルコン空対空ミサイルを搭載できるため、攻撃が可能です。

YF-12A(ロッキードがアメリカ空軍向けに開発していた試作迎撃戦闘機)(パブリックドメイン)

YF-12にはXF-108のために研究開発したAN/ASG-18のレーダーシステムを装備しいるため、尖端(鼻)の部分が改良されて、機体が通常より長くなっています。

1965年5月1日、この航空機に対して極限の高度まで飛ばす試験飛行が行われ、その高さは上空2万4462.60メートルに到達し、時速3315.05キロの記録を残しました。

今回の試験飛行の結果に米軍が大満足し、1965年、ロッキード・マーティン社に93機のF-12Bのオーダーを出して量産し、米議会も9千万ドルの資金計画に同意しました。ただし、当時の国防長官が、ベトナム戦争にほとんどの予算を費やしたため、別タイプの戦闘機を購入する必要はないという理由でF-12B機のオーダーは打ち切ったのです。

4. A-12ステルス攻撃機Avenger II(アヴェンジャーII)

1988年1月13日、マクドネル・ダグラス社とジェネラル・ダイナミクス社は共同で米海軍からA-12 Avenger IIの研究開発を依頼されました。

A-12 Avenger IIイメージ図(パブリックドメイン)

このステルス攻撃機Avenger II(アヴェンジャーII)は独特な機体であり、その空気動力学(空気圧)の設計が長距離の飛行を可能にしました。同時に空対空武器を運ぶ能力を整えており、技術装備がF-117Aよりも優れていたため、米海軍はこれを採用することにしました。計画では1990年代の半ばに完成して艦上に整備する計画でしたが、しかし、1991年1月、当時の国防長官であるリチャード・ブルース・チェイニー氏がこの計画を取り消しました。原因は予算が米空軍と海軍の3年間の予算総額に相当したからです。

5. F-16XL:F-16の改良機

40年前から、F-16 戦闘機はアメリカ歴史上最も成功した戦闘機であることを疑問視する人はいないでしょう。なぜなら、F-16戦闘機は米軍のベトナム戦争で得られた経験と教訓を生かして設計された戦闘機であるため、1978年からアメリカ同盟国の多くの国の主力戦闘機となっています。しかし、実はF-16機の服役の前の年にF-16よりも性能が高いF-16XLの試作機が開発されました。

F-16XLは、ジェネラル・ダイナミクス(のち軍用機部門はロッキード・マーティンに売却)が開発した試作戦闘爆撃機であり、F-15Eのライバルでもありました。

F-16XLの機体の長さはF-16より142センチ長く、空気を吸い込む部分が機体の下に設置され、腹部エアインテーク、シングルエンジン、シングル垂直尾翼を採用しました。三角の翼を持っていて、尾翼をなくし、着陸装置の構造を強化し、垂直尾翼の根元に減速パラシュートを設置しました。

F-16XL(上部)和伝統的F-16(下方機)(パブリックドメイン)

F-16XLの新しい翼面積は元の12%しかなく、重量はF-16Aより1300 kg増加し、航空機の燃料タンクも82%拡大され、M61 20mm大砲が航空機に固定されています。翼と腹部の下に17個の固定用端末が装備され積載重量は6800 kgであるため、F-16XLは「爆弾トラック」とも呼ばれます。

結局、生産コストとシステムの冗長性により、F-16XLはF-15Eに負けましたが、多くの人は依然としてF-16XLが実際にはより優れた試作機であると信じています。

(編集・柳晶)