トロイの木馬のお話(2)

10年も包囲されていたトロイの人々は、突然長い間悩まされてきたギリシャ軍が嘘のようにいなくなったのに歓喜し、街ではギリシャ軍が海沿いの小さな入り江の葦の茂みに残した奇妙な怪物の話でもちきりでした。正午には、トロイの老王がギリシャの侵略者が全面的に撤退し、国民生活が正常に戻ることを全国民に告げました。

そんな中、数人の物好きな戦士たちがギリシャ人が残したテントに入りました。彼らはそこで傷跡だらけのギリシャ人の脱走兵を見つけました。

人々は10年にもわたって悩まされてきたギリシャ軍が忽然と消えた理由について、このギリシャ人なら何か知っていると考え、拷問などせずに色々と尋ねてみることにしました。 すると彼は自分の生い立ちやギリシャ遠征軍の動きについて説明しました。

男の名はシノンと言いました。シノンは、ギリシャ遠征軍の有名な英雄として知られ、兵士たちから高い評価を得ていましたが、遠征軍に帯同していた占い師カルカスと互いに憎しみあっていました。

シノンの話によると、木馬がトロイに現れる10日ぐらい前のこと、遠征軍の指揮官であるユリシーズは長い間トロイを征服することができなかったので、軍を撤退させ帰国する計画していました。

翌日、彼らは全軍を集めて船に乗り込みはじめました。すると突然、海は嵐に襲われました。嵐は数日間続き、荒波が海岸に打ち寄せ、ほとんどのテントが破壊されました。 

船がまったく海に出航できないのを見て、ユリシーズは非常に心配し、緊急に占い師カルカスを呼び、この不運の対策を考え出すように頼みました。カルカスは、「軍がトロイを10年間包囲し、都市国家の守護神である女神アテナを怒らせたため、何日も嵐が続き、ギリシャ兵が国に戻るのを妨げている」「女神アテナの怒りを鎮めるには、巨大な木馬を作り、ギリシャ遠征の恥と懺悔の印として海岸に置いておくことで、嵐が収まりギリシャ軍が無事に祖国へ撤退できるようになる」と言いました。

この占いを聞いたユリシーズはすぐに、巨大な木馬を作るために、ギリシャ兵に昼夜を問わず働くように命じました。トロイの木馬が完成した日、嵐は本当に突然止まりました。ユリシーズは大喜びし、翌日出航する準備をしました。

カルカスは、ギリシャに戻る前に、議会で認められている戦士を太陽神アポロンに捧げなければならないと言い、この生贄に最もよい候補であるとユリシーズに進言しました。

シノンはすぐに縛られ、テントの外の茂みの下に投げ込まれ、翌日の日の出前に太陽神アポロンの生け贄とされることになりました。しかしその夜、シノンは縄から抜け出し、逃げ出しました。しかし見張りに発見され、激しく殴られ、再び縛られ、放棄されたテントに投げ込まれました。

時が来れば、生贄の祭壇に連れて行かれるはずでしたが、その後、他のギリシャ軍の連中がどういうわけか早く出航したため、その儀式は取りやめになりました。彼は見捨てられたので逃げました。しかしシノンは、その後、トロイの人々に見つかり捕らえられ軍に送られました。

シノンの供述を聞き、トロイ軍の司令官は満足していましたが、ギリシア人が残していった巨大な木馬には疑念が残り、「あの背の高い木馬はどうしたのか」と質問をしました。

するとシノンは「ユリシーズは、占い師カルカスの指示に従って、この大きな木製の馬を特別にこしらえ、女神アテナに恥と懺悔のしるしを示した。そうしないと、軍は出航して帰国できないのだ」

「木馬は、ずっと海岸の葦の間に静かに座っている。カルカスは『トロイア木馬が送られるところならどこでも、そこの人々に平和と幸福をもたらすだろう』と宣言していた」

「ギリシア人はトロイ人に木馬の恩恵を与えたくなかったので、街中に運び込まれないように、木馬を広く大きく作った。彼らは木馬を海岸沿いの葦の間に止め、彼らは木馬が波で打ち砕かれ、トロイの人々に深海でも沈めてもらうことを期待している」と言いました。

(翻訳・微宇)