第二次世界大戦後の1948年4月7日、全人類の健康を願って、世界保健機関(WHO)が設立される。
▼その設立日である同日を「世界保健デー」といい、健康へのさまざまな啓発が世界的に行われるのだが、今年の場合、なんとも霞のように存在感が薄い。
▼そのいきさつを述べることは、小欄としても、あまり意味を感じない。個人名は挙げないが、結論だけ言えば「あれは、役に立たない」と多くの人が思ってしまったからだ。それにしても、事態を軽視する方向に判断を誤ることは、かくも重大な災禍を招くのか。
▼ふた月ほど前だったか、7月の東京五輪開催がまだ議論の段階にあった頃には、IOCのバッハ会長も「開催については、WHOの判断に従う」というような発言もあった。その機関の名前が聞かれたのは、もはや遠い昔のことに思われる。
▼自分たちで、しっかりやる。今は、それに尽きるだろう。本日中に、緊急事態宣言が出される日本。私たちには初めての試練となるが、個人の生活を維持しながら公共の責任を最大限に果たすという、この高度な両面作戦に必ず勝利しなければならない。この戦いには大きな人道的意義がある。皆の命を、皆で守る。その理想形を、我ら日本人は世界に現出して見せようではないか。
▼士気は大いに高く、三笠の艦橋にZ旗が上がったつもりで結構だが、第一に武器とすべきは「他者への優しさ」であることを忘れてはならない。優しさは、必ず社会を良くする知恵の泉となる。9年前の大災害の中でも、日本人はそれができた。世界は、そんな日本人に驚嘆したのである。