暗雲漂う原油市況、世界の在庫増や供給超過見通しで

2018/03/22
更新: 2018/03/22

[ロンドン 16日 ロイター] – 石油生産者にとって、表面的に見ると今の市場環境は好ましい。世界の原油需要は過去3年で最も急速に伸びており、石油輸出国機構(OPEC)の減産順守姿勢はかつてないほど厳格で、米国のシェール生産増加という逆風を打ち消すはずだからだ。

しかし市場には今後の雲行きが怪しくなることを示す明らかな兆候がいくつか出ている。世界の原油在庫が、年初時点で再び増加していることはその1つ。国際エネルギー機関(IEA)とOPECはこのほど、7カ月連続減少してきた世界の原油在庫が増加したと発表した。

またIEAとOPEC、米エネルギー情報局(EIA)が非OPEC地域、特に米国の生産増加ペースを過小評価してきたが、OPECによる減産が効果を発揮するようになった2017年半ば前後以降で初めて、そろって今年の原油需給が供給超過になるとの見通しを示した。

こうした中で1月終盤に1バレル=71ドルと約3年ぶりの高値を付けた北海ブレント先物は今後、足元の65ドル近辺から大きく値上がりしにくいかもしれない、とアナリストは話している。

ジュリアス・ベアのコモディティ調査責任者ノーバート・ルーカー氏は「原油市場は見た目より脆弱だと考えている。供給が力強い需要の伸びに猛スピードで追いつこうとしている。われわれの試算では、世界の在庫は引き締まりトレンドが鈍化し、最終的に年内に増加トレンドに復帰する」と述べた。

IEAによると、先進諸国の原油在庫は過去12カ月で2億バレル近く減っている。ただ今後減少ペースが鈍るとともに、投資家の忍耐力も弱まりかねない。

なぜなら米国の原油在庫が2年ぶりの低水準になっているにもかかわらず、先物市場ではわずかだが期近限月の価格よりも期先が高い「順ざや」になっているからだ。順ざやは通常、今後供給が増えるという予想が反映されたもの。北海ブレントはまだ期近が期先を上回る「逆ざや」とはいえ、その差は小さく順ざや化までの距離はそう遠くない。

逆ざやなら投資家は価格上昇に賭けるロングポジションで利益を得られるが、順ざやになるともうけがなくなる。

SEBのコモディティ戦略責任者Bjarne Schieldrop氏は「OPECが今年は供給超過になると言っていることや、米国のシェール生産拡大などがすべて、価格の上昇余地を抑えている」と指摘した。

同氏によると、これまでは限月乗り換えで利益が見込まれると想定されたため、米国産原油と北海ブレントを合わせて総額約800億ドルものロングポジションが積み上がり、上値を抑える要因になってきた。だが今後ロングを保持していると大規模な損失が生じる事態になれば、売りが広がって北海ブレントは短期的に60ドルを割り込んでもおかしくないという。

(Amanda Cooper記者)

Reuters
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