「未来の支配」をめぐる米中AI合戦(2/7)

2021/12/31
更新: 2021/12/31

英国の調査会社IHSマークイットは、世界において監視に使われるカメラの数が2021年末までに10億台を超えると予想した。中国の監視カメラの数は世界総数のおよそ半分強を占めるという。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の2019年12月に報じた。

比較サイトComparitech.comが5月に発表した分析よると、世界で監視カメラ密度が最も高い20都市のうち、16都市が中国にあるという。

米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所の元エンジニア、ジャン・チー氏は大紀元の取材に対し、中共の顔認識技術は2018年にはすでに成熟していたと語った。
「彼らはAIシステム全体をカメラ内部に導入している。(映像を投影した)スクリーンで監視する必要もない」とチー氏は述べた。

中共は2017年、世界最大の監視ネットワーク「天網(スカイネット)」を構築した。ニューズウィーク誌によると、このシステムの能力を試すために、BBCの記者ジョン・サドワース氏は貴州省貴陽市に行きその性能実験を試みた。中国南西部の約350万人の首都である貴陽で、できるだけ発見されないようにするという任務を与えられたサドワース氏は、顔認証システムからの回避を試みたが、わずか7分で当局に捕まってしまった。

人工知能国家安全保障委員会は4月、中共を戦略的競争相手としてリストアップし、中国のAI分野での発展を脅威とみなす報告書を発表した。「中国のAIの国内使用(監視と抑圧)は、個人の自由を大切にする世界中の人々にとって、冷酷な先例となる」と著者は主張する。

米国のシンクタンクであるブルッキングス研究所のジョン・アレン所長とダレル・ウェスト副所長は、人工知能に関する書籍『Turning Point(ターニングポイント)』を共同執筆し、健全なAI技術活用について論じた。同書では、倫理原則の作成、政府監督の強化、企業責任の定義、プライバシー要件の厳格化、新技術の悪意ある使用に対する罰則などが言及されている。

前出のZheng氏は、欧米諸国はAIの分野に関する条約を早急に策定すべきだと考えている。中共が協定に違反すれば、それに応じて制裁を加えることができる。

米国は中国のAI開発の大口投資家

人工知能における中国の躍進は、大規模な資本によって支えられている。リャオ氏によると、脅威が顕在化しているにもかかわらず、ウォール街は依然として中国のAI産業の最大の投資家であるという。

中国本土のほとんどすべての大規模なハイテク企業は、米国の資本に支えられている。例えば、百度、テンセント、アリババやティックトックの親会社であるバイトダンスなどの中国の大手テクノロジー企業は米市場上場企業であり、長年にわたりウォール街から多額の投資を受けてきた。そして、これらの大手テクノロジー企業は、AIスタートアップ企業を含む中国国内のテクノロジー企業に多額の投資を行っている。

ウォール街の直接投資とベンチャーキャピタルは「ハイテク事業の企業支援構造を中国本土にもたらし、中国が米国と競争するハイテク産業を創出するのを手助けしている」と考えているかもしれない。しかし、この道理は自由民主主義体制を土台として成り立つ。中国本土ではハイテク産業を支配しているのは党の利益を第一義とする中国共産党なのだ。

(つづく)

武田綾香
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