THE EPOCH TIMES

【世界むかしばなし】9 石工と山の精霊

2013年11月18日 07時00分


 すると次の瞬間、石工は王子様になっていました。外に出かけるときには憧れの金の日傘が頭上にあり、欲しいものはなんでも手に入ります。しかし、石工の心は満たされず、まだ他に求めるものをさがしました。そして、日傘で守っても自分の顔は日焼けしてしまい、水をまいても強い日差しが植物を枯らしてしまうことに怒りを感じ、叫びました。「王子の権力も太陽の力にはおよばない。ああ、わしも太陽になりたいもんだ!」

 すると山の精霊は答えました。「そなたの望みを叶えましょう。太陽になれ!」

 すると、石工は太陽になりました。自信満々で四方八方に強い光を放ちます。草花を枯らし、王子であっても貧しい者であっても同様に日差しを照りつけました。しかし、間もなく自分の力に飽きてしまい、またもや石工の心に不満がもたげてきました。そこに雲がやってきて太陽を覆い隠したので、石工は腹を立てて叫びました。「くそっ、雲にこんなみじめな思いをさせられるなんて。ああ、わしも雲になったら他を負かせるのになあ!」

 すると山の精霊は答えました。「そなたの望みを叶えましょう。雲になれ!」

 次の瞬間、石工は雲になって、空に浮かんでいました。自分が太陽の強い日差しをさえぎると植物が再び緑を吹きかえし花を咲かせたので、石工は喜びを感じました。しかしまだ満足はできず、来る日も来る日も雨を降らせ、川をあふれさせ、田畑を水浸しにし、村々を破壊しました。そんな中で、岩山だけはびくともしませんでした。石工は驚き、叫びました。「なんだと? 岩が一番強いというのか? わしも岩になれたらなあ!」

 すると山の精霊は答えました。「そなたの望みを叶えましょう。岩になれ!」

 石工は何にも動じない岩となりました。太陽の強い日差しも洪水もどうってことありません。「とうとうこの世で一番強くなれたぞ!」と石工は思いました。ところがある日、足元で奇妙な音がしました。見ると、人間が岩肌を削り出しています。恐怖でブルブル震えていると、大きな岩のかたまりが切り取られて地面にころげ落ちました。彼は激怒して叫びました。「なんてこった! あのちっぽけな人間が岩より強いというのか? ああ、人間に戻れたらなあ!」

 すると山の精霊は答えました。「そなたの望みを叶えましょう。もう一度、人間になれ!」

 そして石工は、汗だくになりながら仕事に精を出す日々に戻りました。硬いベッドや粗末な食事に不満を言うこともなく、毎日の生活に幸せを感じます。山の精霊の声を聞くことは、もう二度となかったということです。

 (Ancient Tales of Wisdomより)
 

(翻訳編集・緒川)

 

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