<孔子学院問題>中国当局が「毛沢東学院」としないのは警戒されるため=専門家

2018/10/22
更新: 2018/10/22

欧州議会の元高官で共産主義に詳しいスウェーデンの著名人は最近、大紀元の取材で、中国共産党政府が対外機関である孔子学院を設置する主な目的は、共産主義思想の植え付けと諜報活動のためだと指摘した。また、「孔子」の名は人寄せにすぎず、「毛沢東学院」としなかったのは、共産主義を恐れる欧米諸国に警戒されないようにするためだと分析した。

中国当局は、孔子学院は中国語と中国文化を広め、国際交流を図ることを目的としていると説明しているが、近年、欧米では中国の対外機関・孔子学院に対する警戒を強めている。

米国連邦捜査局(FBI)は、統一戦線部が設立した孔子学院は、中国から派遣された職員が関係国の機密情報を入手したり、政治家を贈賄するなどのさまざまなスパイ行為を繰り返していると指摘した。

大紀元はこのほど、欧州評議会議員会議(PACE)元副会長でスウェーデン元国会議員ヨラン・リンドブラッド(Goran Lindblad、68)氏を取材した。同氏は、全体主義や共産主義を研究する非政府組織「欧州の記憶および良心のためのプラットフォーム(Platform of European Memory and Conscience)」の元会長でもある。

ヨラン氏は、中国当局は孔子学院を通じて、外国の若い世代に直接共産主義思想を植え付け、学校内の運営や学術研究・言論の自由に手を伸ばそうとしていると指摘した。下記にインタビュー内容をまとめた。

共産主義宣伝にマネーを惜しまない

1930年代ムッソリーニ政権がスパイ拠点として欧州各国に設置したイタリア語講座と、孔子学院の役割は類似するという。当時ヒトラーユーゲントや旧ソ連ピオネールも孔子学院のように、少年少女に対して党の思想教育を行い、支配を強めた。

共産主義国家は若い学生だけでなく、知識層に対しても、思想の浸透を図った。共産党規定には、全世界に共産主義勢力を拡大すると明記されている。東ドイツはその例だ。旧ソ連の影響力下にあった東ドイツの秘密警察・諜報機関シュタージも、欧州各国の知識人や学者に対して思想浸透工作を企てた。

最近公開されたスウェーデン側の文献によると、当時600~700人のスウェーデン人教師が東ドイツ政府の招へいで、東ドイツに入り、思想教育を受けた。当時、スウェーデン人教師らの旅費と滞在費用はすべて東ドイツ当局が負担していたという。

1960年代に高校生だったわれわれの世代は、なぜ高校教師たちはあれほど左傾化するのかと不思議に思っていた。

共産主義国家や他の全体主義政権は、その思想を植え付けるのに、巨額の資金を投じることを惜しまない。

孔子学院がやすやすと欧米社会に受け入れられたのは、欧米の人々が中国共産党についてはっきり認識できていなかったからだ。中国共産党による悪行、特に20~30年前のことについて知っている人は少ない。

また欧米の学校で、全体主義について学ぶ機会はとても少ない。ほとんどの学校は第二次世界大戦以降の世界情勢を教えてこなかった。

同時に、欧州ではカール・マルクスの共産主義は「良いものだ」と考える左派学者が多い。学者たちは、共産主義は発展の道を誤っただけだと認識している。しかし、マルクスは独裁体制を維持するためには暴力(テロリズム)しかないと宣言しており、中国当局は現在、まさにこのプロセスを踏んでいる。

言うまでもなく、中国当局が裏で孔子学院を牛耳っている。孔子学院の総責任者は、中国共産党中央政治局委員、国務院副総理または省長官レベルの高官を務めている。全体主義のもとで、中国当局は国内外における国民・党員らのすべての活動を支配している。

孔子廟(chia ying Yang/Flickr)

人寄せの孔子の名 警戒恐れ「毛沢東学院」にはならなかった

儒教思想を教えられない「孔子学院」その名は矛盾している。中国共産党は、「仁」と「礼」を唱える孔子の思想を数十年間排斥してきた。(人寄せのために)孔子の名を利用しただけだ。中国当局は欧米社会で、もしこの対外機関を「毛沢東学院」と名付けたら、たちまち警戒されるとわかっている。

今後、世界各国の政府は、より一層中国当局と孔子学院に警戒したほうがいい。孔子学院を設けた大学は特にそうだ。孔子学院のスパイは、学内の科学研究技術を少しずつ盗んでいく恐れがある。

もし、該当教育機関内に中国側にとって価値のある情報がないにも関わらず、孔子学院を設けていたら、それも中国共産党政権のための宣伝を担っていることになり、やめたほうがよいだろう。

国際社会において、現在孔子学院の真の目的を認識できる人はまだまだ少ない。

孔子学院の職員のなかには、もちろん普通の語学教師がいる。しかし、そこに中国国家安全当局に所属する工作員が紛れているのを忘れてはならない。工作員は各国の商業機密や軍事機密を不正に入手しようとしている。

数年前、中国当局はスウェーデンのストックホルム大学にあった孔子学院(ストックホルム大学は2015年1月学内の孔子学院を閉鎖)を、王立工科大学に移転しようとした。王立工科大学はスウェーデン空軍に協力し、非公開の軍事研究が行われている。不正に軍事情報を入手しようとする中国当局の狙いは明かだ。

(取材ジーナ・シェークスピア、翻訳編集・張哲)

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