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6月21日、福井日銀総裁(写真)は村上ファンドへの資金拠出に関し誤りを認め報酬月額の一部返上を表明したが、引き続き総裁職にとどまることを明言。20日撮影(2006年 ロイター/Yuriko Nakao)

福井総裁は「続投・早めの政策対応」で信認確保狙う

 日銀の福井総裁は村上ファンドへの資金拠出に関して誤りを認めて報酬月額の一部返上を表明したが、引き続き総裁職にとどまることを明言した。また、早めの金融政策対応にも言及し、早ければ7月のゼロ金利解除の可能性もにじませ、「続投・機動的政策対応」の組み合わせで、日銀の信認確保に取り組む姿勢を明確にした。市場関係者の多くは、福井総裁のメッセージを受け止め、7月解除の可能性を織り込みに行き始めたが、一部には「政府への借り」ができて、早期解除は難しいとの見方も出ている。福井総裁にとって7月は正念場となりそうだ。

 <政府・日銀は村上ファンド問題の幕引きに懸命>

 20日の福井日銀総裁は、村上ファンドに対する資金拠出問題の釈明に追われた。午後の日本記者クラブでの講演では、今回の騒動に対し謝罪するとともに、2003年の日銀総裁就任時に同ファンドを解約しなかったことについて「私の不徳の致すところ。真しに深く反省している」とし、当時の判断に誤りがあったことを認めた。

 こうした批判の高まりを受け、日銀は武藤副総裁を議長に、役員の金融取引などに関する規制の見直しや資産公開のあり方などを含めた内規の見直しに関する検討会議を設置すると発表。

 また、福井総裁は報酬月額の30%を6カ月間返上するとともに、村上ファンドに拠出した元本1000万円とネットの利益を慈善団体に寄付すると述べた。

 さらに福井総裁が自身の進退について「批判を受けとめ、職責を全うしていきたい」と述べると、安倍官房長官がすかさず午後の定例会見で「しっかり職責を全うすることで責任を果たしてほしい」と援護射撃するなど、政府・日銀は村上ファンド問題の早期幕引きに懸命だ。

 <野党は責任追及の手緩めず>

 しかし、野党は追及の手を緩めない方針。20日の衆院財務金融委員会の理事懇談会では、福井総裁の村上ファンドの持分残高や個人名義で保有している株式などが明らかになったほか、1999年10月から2001年2月の純利益242万円が現金化されていることも判明した。

 民主党の小沢鋭仁理事は、村上ファンドの契約書の目的事項に「国内の公開会社の投資証券に投資を行い、そのキャピタルゲインを得ることを目的とする」と記されている点を問題視。福井総裁が利殖目的ではなかったとする投資について「契約書には利殖目的が明記されていたと理解している。日銀総裁としての適格性が問題になっている」と批判した。財務金融委員会理事会は22日に福井総裁を参考人として呼んで質疑を行うことを決めており、日銀への逆風が収まる気配は見えない。

 <総裁は早期ゼロ金利解除に意欲も、市場は疑心暗鬼>

 政治問題化の度合いを深めるなか、福井総裁は20日の講演や記者会見でも「日銀の金融政策プロセスが政治的な動きに左右されることはない」「従来通り、独立の金融政策運営をしっかりやっていこうということを各(政策)委員が確約してくれた」と村上ファンドへの資金拠出と金融政策運営は別問題と強調した。

 ゼロ金利解除に関しても「政策金利を変化させていくことは、経済活動の行き過ぎを抑制し、息の長い成長に導くことにつながる。早期に小刻みにゆっくりと政策対応をするという難しい局面に差しかかっている」とゼロ金利政策の早期解除に意欲を示している。

 これを受けた金融市場では、日銀による7月解除観測が再燃する格好となった。市場では「福井総裁の発言は、村上ファンド問題をきっかけに市場で金融政策対応が遅れるとの思惑が台頭してきたことに対し、そうした見方を修正する狙いがあったのではないか」(JPモルガン証券・チーフエコノミストの菅野雅明氏)との声が出ているほか、「7月にもゼロ金利政策を解除する方向性をにじませた」(みずほ証券・シニアマーケットの落合昴二氏)との見方が広がっている。

 他方、総裁の続投を支持している政府サイドは、安倍官房長官が「デフレは継続していると考えており、ゼロ金利継続により、金融面で日本経済を支えてほしい」とゼロ金利解除は時期尚早との見解を繰り返している。

 さらに福井総裁の村上ファンドでの運用益が1000万円を超えることが明らかになっており、日銀総裁の信認が大きく傷ついたとの見方も一部では指摘されている。

 このため市場関係者の中には「小泉政権としては福井日銀総裁を徹底的に守り抜くだろうが、福井総裁自身は政権に守られるほどに道義的責任と政策運営を分かち難くなり、ゼロ金利解除に動きづらくなる」(第一生命経済研究所・主席研究員の熊野英生氏)との見通しも出ている。

 だが、福井総裁が続投を決断した以上、独自の政策判断で金融政策を決定するという原点に帰ることが、信認の回復につながるとの見方が市場では少なくない。「7月解除を決断して、政治からの圧力を遮断すれば、福井総裁への信頼感はかなり上昇するだろ」(邦銀関係者)との声や「7月解除ができなければ、8、9月も難しくなるのではないか。あえて早めの対応と言及したことは、福井総裁の不退転の決意の表れではないか」(外資系証券の関係者)との見方も出ている。

 市場関係者からの信認や政府との協調を図りつつ、福井総裁は7月の金融政策決定会合に向け、重い判断を迫られることになる。

 [ロイター6月21日=東京]

 (06/06/21 14:42)  





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