印刷版   

中国の家電最大手、ハイアール・グループ(海爾集団)。海外に生産拠点を構築し、海外の市場シェア拡大に取り組んでいる(Sean Gallup/GettyImages)

加速する中国企業の海外進出 文化と政治理念の相違で限界も

 【大紀元日本2月1日】潤沢な資金力を駆使して加速する中国企業の海外進出は国際社会から注目を集めている。中国の4大国有銀行の一つである中国工商銀行は17日、欧州で5つの支店を同時にオープンした。4日後、香港に拠点を置く東亜銀行から米国現地法人、バンク・オブ・イーストアジア(USA)NAの買収を決めた。実現すれば、中国の国有銀行が米国内の銀行業務に本格的に参入することになる。

 中国政府の強力な推進策により、中国企業の「走出去(海外進出)」戦略が着実に進んでおり、「中小企業の84%以上が対外投資を強化する計画がある」と国内紙が報じた。一方、収益を上げている企業は少なく、約70%の企業が巨額の損失を出していることが分かった。海外での経営と管理経験の不足や、政治制度の違いにより生じたメンタリティの相違などの問題は、中国企業の海外進出の大きな障害ともなっていると指摘されている。

 金融界で存在感を増す金融機関の動き

 中国工商銀行を含めて、金融機関の進出は目立っている。2009からの2年間、中国政府系の国家開発銀行と中国輸出入銀行の2銀による発展途上国向け融資額が、同期の世銀が供与した発展途上国向け融資額を超えたことが、18日付の英フィナンシャル・タイムズの報道で明らかになった。その融資額は1100億ドルを超えた。

 海外進出を進める金融部門の目的ははっきりしている。すなわち、融資などの資金提供を持って資源と交換するか、輸出の拡大を狙うかという二者択一だ。ロシア、トルクメニスタン、ベネズエラ、ブラジルと提携した融資の見返りに石油の輸入取引が挙げられる。また、融資との引き換えにインド企業に発電設備の売り込んでおり、ガーナやアルゼンチンでは、施工を中国が請負うという条件で、中国はインフラ建設に融資している。

 近年、金融部門のアフリカへの進出が特に活発している。国家開発銀行の公式サイトによれば、2009年、同行はアフリカで中小企業専用の融資枠を設け、中国の農機メーカーの海外進出を支援し、農機設備の輸出の拡大を狙う。2010年までに、この中小企業専用融資枠はアフリカ全域のうち23カ国までに及んだ。

 非金融部門の海外直接投資の急増

 金融界の海外進出のほか、非金融部門の対外投資も急増している。2010年に中国の上場企業による海外買収は2005年の6倍にもなる250件に上った。中国紙・国際金融報の報道によると、監査、税務、アドバイザリーサービスを提供するKPMGがこのほど発表した報告書によると、対外投資計画を今後継続する予定のない大企業はわずか4%にとどまる一方、中小企業の84%以上が対外投資を強化する計画という。

 家電最大手のハイアール・グループ(海爾集団)のように海外に生産拠点を構築し、海外の市場シェア拡大に取り組んでいる企業のほか、M&A(合併・買収)形式は、中国の非金融企業の海外進出の最重要手段となっているようだ。

 中国石油天然気集団公司(中石油、ペトロチャイナ)、中国石油化工集団公司(中石化、シノペック)、浙江吉利控股集団、国家電網公司(SGCC)、などの大型国有企業も海外向けで大規模なM&Aを行っている。2010年、M&Aによる対外直接投資額は238億ドルに達し、非金融企業の対外投資額の40.3%を占める。18日商務部の定例記者会見で明らかになった。

 資源獲得型M&Aのほかに、市場シェア拡大型M&Aも注目される。典型の例は自動車大手の浙江吉利控股集団はボルボを、パソコントップのレノボ(聯想集団)はIBMを事業買収し、M&A(合併・買収)による市場シェアの拡大を狙う。さらに、レノボは過半出資でNECと合弁でパソコン事業を展開することで最終調整に入ったと21日付けの日本経済新聞の報道で分かった。

 中国企業海外進出の限界

 しかし、華やかな海外デビューを果たした後、険しい道のりは企業を待っている。

 国務院王岐山副首相は2009年3月に、過熱する海外買収について「買えたとしても、(その後の)経営管理できるのか」と疑問を呈した。

 大手コンサルティングファーム・マッキンゼーが発表したデータによると、中国の67%の海外買収は失敗に終わったという。国内紙・21世紀経済報道は、2008-10年の三年間に海外買収に6000億元を投じたが、今後3~5年の間、その半額に相当する3000億元の損失が出る、と報じた。

 その失敗例として、2009年、大手保険会社の中国平安は出資先のベルギー・オランダ系の金融会社フォルティスの経営悪化で、約2200億元の損失を計上した。鉄道建設大手の中国中鉄も豪ドルの運用失敗で約270億円の損失を出している。

 また2005年、大手自動車メーカー上海汽車は450億円を投じて韓国の双龍自動車を買収したが、労働組合との対立などで経営が混乱し、わずか4年後に双龍自動車が経営破たんした。

 中国企業の海外進出の限界について、17日香港で開かれた第4回アジア金融フォーラム(AFF)で、レノボの最高経営責任者の柳伝志氏は、大多数の中国企業は海外進出の条件を備えていないと明言した。また、一部の大手企業トップは、「人材不足や文化の違いに加え、政治理念の相違は中国企業の海外進出の大きな障害ともなっている」と分析した。同フォーラムへ出席した監査法人トーマツ中国の謝其龍氏は、国家安全を理由に拒否されるケースは多く、先端技術の中国への移転を危惧しているためだという。

 さらに、中国企業の海外進出の現状からみて、明確な進出目標を持たずに海外に出ているケースも少なくない。これは企業の海外進出上で大きな損失をもたらしかねない。一方、60%の企業は、「明確な海外投資戦略と目標を定めていない」ことが海外投資を行う際の最も深刻な過ちになると認識している。

 南方週末が掲載した記事は「(買収を行う)国有企業の多くは経営体制に問題があり、管理水準が低い」、「今まで消費者の権益を軽視する経営方針を採ってきたが、海外の市場競争原理に適応できない」とその原因を指摘した。

 国際ルール どう共有するか

 経済発展を背景に、高揚感が漂う中国国内ムードと対照的に、先般の胡錦濤主席の訪米は「中国は世界最大の途上国」とし、人民元の切り上げ問題、知的財産の保護問題、人権問題を「弱者の理論」を盾にして国際協調に難色を示す。世界経済と深くかかわる中国はいかに既存の世界秩序へ対応するかが今後の重要課題となる。

 尖閣諸島問題やレアアース禁輸で、民主主義と市場主義をとる多くの国とは異なる一党独裁国家・中国の異質さが露呈され、国際社会の透明で民主的なルールを共有できるか。国際社会で「中国異質論」が広がりを見せているなか、中国政府・共産党主導の海外進出は火種を残しかねない。

(翻訳編集・林語凡)


 (11/02/01 08:13)  





■キーワード
中国企業  走出去(海外進出)  M&A  国際ルール  


■関連文章
  • 海外上場16年で10兆円を調達 中国企業、不正頻発(09/10/14)
  • 中国企業、日本・水源地の買収計画(09/05/16)
  • ムーディーズ:中国企業、倒産の波が拡大 (08/11/23)
  • 中国玩具輸出企業、今年半数が倒産(08/10/22)
  • ザンビア大統領選:現職が再選、集計作業に中共の関与疑惑(06/10/06)
  • 北越紙の独立委、買収防衛策の発動を取締役会に勧告(06/08/09)
  • 海外企業の中国企業買収、商務省が規定案を公表=新聞(06/08/08)
  • 王子紙がTOB条件変更の可能性、買付株数引き下げも(06/08/07)
  • 日本製紙が王子紙のTOB阻止目指す、北越株を10%未満取(06/08/04)
  • 米フォードがM&A専門家を採用、金融子会社売却の観測強まる(06/08/03)
  • 王子製紙が北越製紙に経営統合提案、TOB実施へ(06/07/24)