韓流は東方文化の代弁者たりうるか?

【大紀元日本2月21日】アジア極東地域の経済的地位が高まるにつれて、中国大陸市場が世界経済の体系に溶け込み、世界の中心が徐々に東へ移ることによって、極東地域の国々は自らの文化に対して再認識することが必要となった。「韓流」は日本、中国、台湾、香港の他、東南アジアの国々でも大流行となった。それは、これらの地域には類似した伝統文化の基礎があるうえ、自らの文化を改めて認識し、自らがどこに帰属するかを考える必要があるからである。

現在、中国大陸で中共によって長期にわたって形成された共産党文化が普遍的に認められない情況下では、「韓流」という、中国のメディアが作り出した韓国の流行文化を描くためのこの言葉は、すでに国内外の華人に普遍的に理解されるようになった。

12月3日、韓国京畿道日山KINTEXで、韓国観光社と国際文化交流財団ならびにCTL Networksが共同主催した2006年「韓流」テレビドラマ博覧会の祝賀会が行われた。(新紀元)

12月3日、韓国京畿道日山KINTEXで、韓国観光社と国際文化交流財団ならびにCTL Networksが共同主催した2006年「韓流」テレビドラマ博覧会の祝賀会が行われた。(新紀元)

経済が勃興したアジアでは、文化の再認識を渇望する

11月29日韓国の済州島で開幕したアジア「韓流」博覧会では、韓国の代表的スター、ペ・ヨンジュンが再び非凡な吸引力を見せ、日本から数千人の韓国映画ファンが、飛行機をチャーターしてやってきた。

「韓流」がアジアを一掃するといった報道は、ここ数年、アメリカの主要メディアでもたびたび見かけるようになり、流行音楽やメロドラマに興味のないアメリカ中年男性さえも、メディアのこのような報道を見て、「最近韓国の男性俳優がとても人気だそうだね」などと尋ねるほどである。

ある国の勢力が強大になるにつれて、その国の文化が次第に世界の潮流となる。例えば、アメリカが強国となるにつれて、米国文化が世界中に拡散し、ハリウッド映画やケンタッキー、マクドナルドが全世界を一掃することになったわけだが、実は、これは人々が米国の文化と生活方式を認め、追求した結果である。

アジア経済の勃興につれて、東方人も同様に、自己の文化を再認識しようと渇望している。そして、「韓流」は正に、この時代背景の縮図なのである。有名な歴史家アーノルド・トインビーは著書『歴史の研究』の中で、唐代以降の東アジアを「極東文明」と分類し、中国以外に、韓国と日本もその代表であるとした。これは、西洋世界のアジア極東地域に対する基本認識であり、中国が過去数千年来ずっと経済、軍事面で覇を称えてきた歴史に基づくものであった。

ドラマ「宮、野蛮王妃」のテーマソング「ごめんね、愛してる」を歌う鄭在旭(新紀元)

SBSのテレビドラマ「雪花」の女優、高婀羅(新紀元)

西側世界も「韓流」ブームの影響を受ける

昨年秋、アメリカの流行雑誌『In Style』に、異なった肌の色にはどんな化粧品を使ったらいいかというコーナーがあった。これまで、このような英文の主流雑誌で、東洋人の顔が違う肌の色の化粧品のモデルとなることはなかった。ところが、昨秋の特集号では、韓国の映画スターで、アメリカABCテレビで放送されたドラマ『LOST』で「善」を演じた金允珍の顔であった。ここ10年、アメリカで中国人がきちんとした身だしなみをしていれば、よく日本人かと聞かれたが、最近では、韓国人と思われる率が高くなった。

世界の目がまだアジアに移っていなかった時、アジアには「アジア文化」なるものは全く存在しないかのようであった。そのため、アジアのどの国もアジアを統一する文化がほしいと思わなかったし、なんとかしてアジアの共同文化を形成するための土台を作ろうともしなかった。アジア文化の代弁者となるなどというのは、まるで触れてはいけないことのようであった。

アジアの東方文化と言ったとき、人々は中国、日本、韓国の中でどの国をまず思い浮かべるであろうか?ただ、これは中国人や日本人、韓国人が決められることではない。なぜなら、「アジア文化」という言葉自身が一定の思惟論理を反映しているからである。通常、欧米の人々から見れば、アジアの文化は欧米の文化と大きく異なっていることから、彼らの中には「アジア文化」という概念がある。ただ、中国人と韓国人にしてみれば、会話しなくても相手がどの国の人であるか分かるくらいに、両者にははっきりとした差異があるのである。

中日は「韓流」を排斥する

「韓流」はアジア東方文化の代弁者となりつつあるのか?

一部の中国人と日本人は、「韓流」が次第にアジア文化の主導的地位に立ち、日中両国に挑戦してきていると感じている。中国、台湾の映画業界との衝突からきた俳優と監督に対する不満以外に、儒教文化の解釈権、中韓日の歴史解釈と文化民族主義の争いも増えた。

日本では2005年11月末、『マンガ嫌韓流』がベストセラーとなった。また、中国のインターネットユーザーは、韓国が中国から伝わった伝統文化を韓国固有のものだとし、さらにはその文化を以って世界文化遺産に申請したことから、「韓流」にかなりの反感を持つようになった。

「韓流」を「アジア流」に変えたい

韓国は今現在、韓流がアジア文化を代表しているという考え方を明確には打ち出していないが、韓国の韓流専門家の韓流に対する位置付けと解釈から、このような抱負が見てとれる。

韓国政府資源文化原形発掘特別案件の参与者であるハートコリア(HEART KOREA)社社長・崔陸相氏は、韓流の使命に言及した際、韓国文化は世界の舞台で東方文化を代表することができてはじめて成功だと言える、と語った。現在の韓流はアジア地域で流行しているだけで、まだ東方文化を西洋にまで伝えるという目標は実現されていない。

韓国文化観光政策研究院院長・宋在祜氏は、記者の取材を受けた際、「韓流を韓国のものだと主張してはいけない。たとえば、今後は今まで重視されてこなかった国や地域の文化も重視し、韓国人の手で韓流を通じて、それらの文化も世界へ広めなければならない。そうすることによって、韓流は多くの文化を包容し、それらを支援しながら、安定していくのである」と語った。

韓流は、長い生命力を保持し、さらに大きな影響力を持ちうるか?専門家たちは一様に、韓流が長い生命力を保持するには、スターに頼った韓流の推進から抜け出し、もっとドラマの中の伝統文化の内包の面で工夫しなければならず、そうしてはじめて、韓流スターが衰えるにつれて韓流が消えてしまうといった危険性を回避することができる。俳優演技学院と古典音楽で名高い韓国中央大学は、韓流文化産業の生命力を引き続き保持するための人材を養成する目的で、2005年3月に韓流修士の学位を設けた。

韓国はさらに多方面の文化空間を探し求める

韓流はまた商業化の挑戦にも直面している。いくつかの会社は、すばやく商業モデルを探し出し、それを大量に複製することによって、多くの金儲けのスターを作り出した。しかし、韓国伝統文化の内包は短期間で複製できるものではない。韓国国際文化産業交流財団の事務処長・劉在淇氏は、「人々は、韓国ドラマはどれもあらすじが似ていると感じていたのが、『チャングムの誓い』によってそのような低潮な側面が大いに挽回された。今後も『チャングムの誓い』のようないい題材があれば、韓流は衰敗を免れるであろう」と語った。

現在韓国の歴史人物のうち、チャングム、明成皇后、朱蒙、渊盖蘇文、許浚(《医道》)、林尚沃(《商道》)がドラマ化された。そして、今後も韓国の歴史はさらに多くの題材を提供することができるであろう。

台湾華岡の中国文化大学韓文研究所所長・林明徳氏は、「中国文化の韓国への影響は数千年に及ぶが、韓国文化のアジアへの影響はわずか数年にすぎず、韓流が今後数百年、数千年続くかどうかは何とも言えない。韓国文化は深みがあり、アジア文化を構成する重要な一つではあるが、唯一のものではない」と語った。

日韓文化の源は中国である

実際、中日韓三国の文化の源は基本的に同じで、いずれも中国に源を発している。ただ、日本と韓国では独自にさらに発展したのに対して、中国では、特に共産党に統治されて以来、伝統文化の発展は途絶えた。

歴史上、アジア地域の文化的帰属感は、多く中国人が牽引役となってきたのであるが、共産党が統治する現在の中国では、中国文化の発展は、権力に付随せざるを得なかったことから、その活力を失ってしまった。そして、30年前に日本の文化が中国においてそうであったように、現在は韓流が中国文化の代替品となっているのである。しかし、中国人は、一旦共産党の束縛から抜け出すことができれば、必ずや集権統治から抜け出した韓国人と同じく、再び自己の文化の位置を見つけて、韓流の中に保たれている伝統文化の内包を輝かさせ、それによって、再び東方世界の舞台の中心に踊り出ることができるであろう。