【漢詩コーナー】敕勒歌(北斉・斛律金)

【大紀元日本5月19日】


敕勒歌 北斉・斛律金

敕勒川
Chìlè chuān
陰山下
Yīnshān xià
天似穹廬
Tiān sì qiónglú
籠蓋四野
Lǒngzhào sìyě
天蒼蒼
Tiān cāngcāng
野茫茫
Yě mángmáng
風吹草低見牛羊
Fēngchuī cǎodī xiàn niúyáng

(訓読)

勅勒(ちょくろく)の川
陰山の下(もと)
天は穹廬(きゅうろ)に似て
四野を籠蓋(ろうがい)す
天は蒼蒼(そうそう)
野は茫茫(ぼうぼう)
風吹き 草低(た)れて 牛羊見(あらわ)る

(日本語訳)

陰山山脈の麓に勅勒の住む平原が広がる。
天は丸いパオのように、四方の草原を覆いつくす。
天は青々とし、草原は果てしなく広がる。
風が吹き、草がなびくと、放牧している牛羊の姿が現れる。



【ひとこと】

勅勒とは昔モンゴル草原に住んでいた民族の名前で、勅勒川とはその人たちが暮らしていた草原のこと。この詩は本来、鮮卑語で作られていたものを、斛律金(こくりつきん)が中国語に訳したものといわれます。

なお、最後の句の“見”は「見(み)る」と「現(あらわ)る」の二つの解釈がありますが、ここでは後者を採用しました。よって、中国語読みも“jiàn”ではなく“xiàn”としました。

もう20年以上も前になりますが、北京に勤めていたとき、5月のメーデーの休みを利用して内モンゴルに行ったことがあります。そのころはまだ草が芽吹いて間がなく、牛羊の姿を隠すほどにはなっていませんでしたが、この詩を詠ずると、果てしなく広がる、青々とした雄大なモンゴル草原が眼前に浮かんできます。

(智)