中国崑崙山の仙人(14) 獨臂神医

【大紀元日本2月13日】

前書


本文は、私が知り合った先天道を修めた平先生(500歳)の経歴を記録したもので、文章はすべて記憶によるものである。何人かの人の記憶を統合したもの、または私と平先生の間であった途切れ途切れのいくつかの対話を元に書いたものであるため、文の繋がりがよくないと感じるところもあると思われる。私はそれらを一つに統合し、論理的な文脈を整えるため、想像を使った文字を加える場合があったが、事実を離れた記述はない。平先生との経験から、私は世の中の多くの出来事は人が思っているものとはまったく違うということが分かった。本文を読んだ後、多くの人は考え方が変わると思う。

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八、獨臂神医

ほとんどの男児と同様に、私のような年の子は、探険などにとてもあこがれていて、何かを恐れることがなかった。平先生が黒魚妖怪を取り除きに行くと聞き、また私と深い縁があると聞いたので、そして、ちょうど夏休みにも入ったので、私は一つの大胆なことを決心した。小さいころ、彼に連れられて、あちこちに地龍掴みに行ったが、今度も彼について遊覧し、見識を広めることにしたのだ。彼がどのように黒魚妖怪を取り除くのか見たかった。きっと神話に書かれているように、見事で、壮大なのだろう。考えれば考えるほど心がワクワクし、決心を固めた。

私の決断に、父はびっくりしたが、平先生は意外に落ち着いていて、まるで既に知っていたかのようであった。彼は、行脚はとても苦しく、食べ物がないときも、外で寝るときもあり、危険も伴うと言った。

しかし、私は既に決心していて、命を失うことがあっても恐れることはないと思い、彼に纏わりついて、放さなかった。平先生は少し間をあけてから、振り返って父を見た後、「あなたはまだ小さいから、私について行きたいなら、先にお父さんに許可をもらいなさい。あなたのお父さんが決めないといけません」と私に言った。

後に父が話してくれたことだが、実は、父も平先生について行きたかったのだという。しかし、口に出さなかったらしい。父は子供の自立を大変重視していて、男はあちこち行って、見聞を広めるべきだと考えていた。それに、平先生なら私をついて行かせても安心できると思い、ゆっくりとうなずいて同意した。ただ、学校には行かないといけないので、夏休みが終わる前には私を戻してくださいと平先生に言った。

平先生は軽くうなずいて同意した。私は大喜びして、急いで服や歯磨き、歯ブラシなどをカバンに入れ、肩に載せた。普段、父はあまり小遣いをくれないが、今回はたくさんくれた。父は、平先生に離れずについて行って、自分では勝手に行動してはならない、学校が始まる前に必ず戻ってきなさいと言った。そして、早く裏門から出発しなさい、母に知られないように、そうしたらお前は行けなくなるからと言った。こうして、私は生まれて初めて家を出ることができたのだ。

平先生について三日あまり歩いたある日、私たちは湖北省の西南部に着いた。

私たちはもっとも暑い正午と午後は歩くのをやめ、眠って太陽が沈んだら、また歩き続け、次の日の太陽が出ると、また涼しい所を見つけて寝た。平先生は、夜は人が少ないから、昼よりも早く前進できると言った。平先生について行くと、まるで風に乗っているようだった。それに、私はあまりにも興奮していたので、全然疲れを感じなかった。

寝るときは、いつも野外で寝たが、その時になると、平先生は、いつも結跏趺を組み、両目をわずかに閉じ、静かに座って、少しも動かなかった。そして、ご飯を食べる時は、飯鉢を取り出し、村の人に(※)「化縁」に行った。「化縁」してきた食べ物は、私に食べさせ、自分は何も食べなかった。何回もこのようなことが続くと、私は申し訳なくなり、彼も一緒に食べるよう勧めたが、彼は頭を振りながら、自分は普段あまり食べないと言った。我が家に泊まった時には、私たちに誤解されるのを恐れて、私たちと一緒に食事をしただけであるという。

平先生は、「化縁」は勝手に行うわけではないと言った。もし、たくさん縁を結んでしまうと、それに縛られてしまい、解脱しにくくなるのだという。それを聞いて、私はとても辛く感じた。なぜなら、彼が私の世話をするために、私に食べさせるために、「化縁」してきたので、彼に迷惑がかかったと思ったのだ。

平先生は和やかに笑いながら、自分と私たちの縁は天が決めた宿命であり、使命があるので大丈夫だと言った。天は縁を結ぶことができるし、それを解くこともできる。今回、見聞を広めに私を連れてきたのも、実は既に定められた縁であり、そうでなければ、私がついてくることはないと言った。私は何か、大きなことが分かったような気がした。

道中、私は絶えず質問をし、彼は多くのことを教えてくれた。今回取り除きに行くこの黒魚妖怪は、四千年あまりも修めており、ずっと湖底で静修して来たという。洞庭湖は水脈の聚結地で、精華のあるところなので、黒魚は水脈の霊気を得て、水神甲に修めることに成功し、どんな武器にも傷つかなくなっているというのだ。

元々黒魚妖怪はずっと湖底で身を隠して静修し、厄介事を引き起こしてこなかったため、龍族と互いに侵犯することはなかった。しかし、ここ数年、天象が異常になり、この黒魚妖怪が動き出したのであった。この妖怪は修行に成功したので、自分に匹敵する対象はほかに誰もいないと思い込み、洞庭湖を自分のものにするため、自ら龍族を攻撃したのだ。妖怪は既に龍族を傷つけ、洞庭湖を占領したので、それを取り除かなければならない。もし水脈がそれによって汚染されたら、それで終わりだというのだ。

※化縁:托鉢のこと。仏教では、托鉢する僧に食事を提供する人は仏道と縁があり、僧侶は乞食をすることで、その人と善縁を結ぶことができるという。

 (翻訳編集・柳小明)