高齢者の救急搬送「80%が転倒」わずかな段差にもご注意を

東京消防庁の救急搬送記録によると、日常生活に支障をきたすほどの事故で緊急搬送された人のうち、65歳以上の高齢者が全体の80%以上を占めていたそうです。2017年には、同庁の所管内で7万人以上の高齢者が緊急搬送されました。

高齢者が緊急搬送された事例の内容を事故別にみると、道路や屋内の段差につまづいて「転倒する」が最も多く、約80%を占めていました。次いで階段、ベッド、椅子からの「転び落ち」が約10%を占めます。

「転倒する」と「転び落ち」を合わせて90%とは意外に多い気もします。加齢による身体機能の衰えにより、特に体力や視力、注意力の低下が主な原因だと言えます。

また、高齢者が「転倒する」「転ぶ」で緊急搬送された場合、30%以上が入院治療を要する重傷に該当することも高齢者の事故の特徴と言えるでしょう。

高齢者が転倒しやすい状況は、以下の7つです。

1、階段の上り下り
家の中で一番段差が大きいのが階段です。スリッパなど、かかとのない履き物で階段を上り下りすることも転ぶ原因となります。階段だけではなく、屋内では滑りやすい履き物や靴下で歩かないようにしてください。

また、夜中に階下のトイレに行くとき、暗い階段を踏み外したという話も聞かれます。階段には手すりをつける、センサー式の照明設備を設置するなども検討してください。

階段の上り下りは、普段から慎重に1段ずつ、ゆっくり歩く習慣を身につけましょう。

2、椅子から立ち上がる
体のバランスが崩れやすいので、慎重に立ちましょう。特に注意してほしいのは回転椅子です。回転椅子から立ち上がるとき、うっかりアームレストや背もたれに手をかけると、それが回転してバランスを崩すことがあります。

長年愛用してきた回転椅子でも、身体機能が低下した高齢者にはお薦めできない場合があることを、ご理解ください。

なお、棚のものを取ったり、照明の電球を取り替えたりする際に、椅子を踏み台にすることは避けてください。特にキャスター付きの椅子は、非常に危険なので厳禁です。

どうしてもご自身で取る場合には、専用の踏み台か脚立を使用してください。ただ、決して無理をせず、ご家族や訪問介護者が来るまで待ったほうが安全です。

3、ベッドや布団から起き上がる
夜中に目が覚めない状態で起き上がると、足がふらついて転倒しやすくなります。ベッドの高さが高すぎて両足が床につかない場合も、転倒する可能性が高くなります。特に小柄なお年寄りには、ベッドの高さを調節してあげましょう。

和室に布団で寝ている人は、かけ布団に足がひっかかり、つまずいて倒れる事故もよくあります。膝に痛みがある高齢者ならば、ベッドで寝るほうが、起きたときの膝への負担が少なくてすみます。

4、ソファや厚い座布団
ふかふかのクッションやソファ、厚みのある座布団などは、高齢者にとっては不安定で危険な場合があります。

また、床に座布団が散らばった状態は、高齢者にとって転倒の原因になることがあります。座布団を使わない時は、部屋の隅に片づけておくようにしましょう。

5、玄関で靴を着脱するとき
高齢者が自宅玄関の段差で転倒して、股関節を骨折する。あるいは玄関から上がる時に、靴がひっかかって足から脱げず、転倒するなどのケースは珍しくありません。

玄関にスペースがあれば、固定したベンチや椅子を置くと、靴を着脱しやすい環境になります。また、玄関に手すりを設置すると体を支えやすくなります。

日中でも、玄関の足元は暗い場合があります。十分な照明を設置し、常に明るい環境にしておくことも転倒防止の一助になります。

なお玄関では、高齢者の後ろに次の人が立つと本人を慌てさせてしまいますので、慌てさせないような配慮をお願いします。

6、廊下と部屋の段差を越える時
日本家屋の場合、室内と廊下の間に障子の敷居あります。それは1~2cmの段差で、わずかな高さですが、身体機能の衰えた高齢者にとっては、ここも転倒しやすい場所になります。また転倒しなくても、足の指先を打撲して痛める事故も起こります。

たとえわずかな段差でも、足を上げにくくなった高齢者にとっては障害物になりますので、スロープをつけるなど対策を講じてください。

7、浴槽から立ち上がる時
入浴中に滑って転び、頭部を強打して外傷性脳出血を起こした事例もあります。浴槽から立ち上がり、片足を上げて浴槽を出る時は特に不安定になりますので、浴室にはしっかりした手すりを設置してください。

高齢者が浴室で事故を起こす例は非常に多いので、すべり防止、転倒防止器具の設置のほかに、同居するご家族の方は、お年寄りが入浴している音などを聞いて、安全を確認するようにしてあげてください。

(翻訳編集・鳥飼聡)