欧米で急増するサル痘「性接触を介した感染が一因か」(1)

現在、欧米では新型コロナウイルスの流行が、一時期に比べれば落ち着いているかのように見えますが、そんな時、新たな感染症が出現しました。

 

サル痘の「新たな感染」が急増

サル痘(Monkeypox)と呼ばれる急性発疹性疾患が確認または疑われる症例が数10例、 10カ国以上の広範囲にわたり報告されています。

この感染症は従来、アフリカ以外の場所ではまれでしたが、今回の発生はこれまでとは状況が違うと見られており、専門家は新たな感染形式の出現に懸念を示しています。

今年5月21日の時点で、80例を超えるサル痘の症例が少なくとも12カ国で報告されており、その範囲は北米、欧州、オーストラリアに広がっています。

感染が認められた国は、英国、スペイン、ポルトガル、ドイツ、ベルギー、フランス、オランダ、イタリア、スウェーデンの欧州9カ国。および米国、カナダ、オーストラリアです。

 

感染さらに増える可能性

世界保健機関(WHO)は5月20日の声明で、約50人の感染が疑われる症例を調査中だと述べ、さらに多くの症例が報告される可能性があると警告しました。この声明はまた、「最近の流行は、従来では見られなかった国で発生しているため非典型的(特殊なタイプ)である」と強調しています。

サル痘の感染は、これまで中央アフリカおよび西アフリカで毎年数百例ほど発生してきました。しかし最近のように、アフリカ以外の国や地域での発症例は、ほとんどなかったのです。

20人が発症した英国では、英国で最初にサル痘を発症した患者は最近西アフリカのナイジェリアに旅行したことがあるものの、その他の患者についてはアフリカへの旅行歴はほとんどなく、アフリカとの接点はないと言います。

 

アフリカ以外の地域で、なぜ?

カリフォルニア大学ロサンゼルス校の疫病学教授アン・リモアン氏は、NBCニュースに対し、「これはサル痘の西側諸国の歴史のなかで、最も警戒すべき流行だ」と語っています。

サル痘はウイルス性の人獣共通感染症で、発症すると発疹とともに発熱、頭痛、発疹、リンパ節腫脹、背部痛、筋肉痛、悪寒、筋力低下などがみられます。

発疹は通常、発熱してから1~3日で現れ始めます。発疹箇所は顔面(95%)、四肢(75%)、口腔粘膜(70%)、性器(30%)、結膜(20%)および角膜に及びます。発疹は様々な段階で変化しますので、一見すると水痘のように見えることもあります。

サル痘の合併症には、気管支炎から肺炎、敗血症、脳炎、および視力障害を引き起こす角膜感染などがあります。無症状感染がどの程度起こりうるかは、今の段階では不明です。

サル痘の潜伏期間は通常6~13日とされていますが、5~21日まで拡大することもあります。症状は2~4週間続き、死亡率は約3%~6%とされています。

「今回のサル痘の爆発ぶりから見て、新しい伝播方式が出現しているかもしれない」と専門家や衛生当局は懸念しています。

サル痘の感染は、感染したヒトまたは動物、およびウイルスに汚染された物品など、とくに密接な接触を介してヒトに伝染することが知られています。

具体的な感染経路としては、「感染者の患部(発疹、かさぶた)に触る」「患者の体液および気道分泌物に接触する」「患者が使用した衣服、寝具、タオルなどに触れる」「サル痘患者に比較的長時間対面して、その飛沫を介して感染する」などが考えられています。

 

「男性の同性愛者」に多い?

しかし、最近の欧米におけるこれらの新規感染者の大半は若い男性であり、主として「男性の同性愛者および両性愛者。または男性同士で性交渉した者」と報告されています。

過去の事例によれば、サル痘は性交渉を介して感染した記録はありません。

エディンバラ大学の専門家であるニール・マーボット氏は、AP通信に対し「最近のサル痘の症例は、性交渉を介した新たな感染の可能性を示している」と述べています。

また、英ノッティンガム大学の伝染病専門家であるキース・ニール氏によると、「感染は性行為だけではなく、性交に関連する密接な接触によっても起こる可能性がある」と言います。

今回のサル痘の発生が、実際に性行為を介して広がったかどうかは、まだ解明されていません。米疾病予防管理センター(CDC)の医療関係者アガム・ラオ博士によると、「患者の精液や膣液からウイルスを分離する研究が不可欠で、サル痘が性感染症であることを確認するまでには、まだ多くの過程が必要だ」と言います。

しかし、過去の研究によると、性行為で感染するウイルスは、男性の同性愛者、両性愛者、および男性同士で性行為をおこなった者の発症頻度が多いことから、性行為は、確かに各種のウイルス感染を引き起こしやすいと考えられます。

これは、今回のサル痘の増加現象と一致する部分があります。
 

(次稿に続く)
(翻訳編集・鳥飼聡)
 

蘇冠米