若年化する心筋梗塞 その原因と今日から始めたい予防策(1)

近年、心筋梗塞は中高年だけの病気ではなくなっており、若年化する傾向が見られます。

動脈を詰まらせる物質は何か

心筋梗塞とは、何らかの原因によって、心臓に血液を供給する冠動脈の一部が詰まり、血流がストップすることです。それにより心臓の筋肉が壊死するため、命にもかかわる重大な事態になります。

心臓の血管硬化あるいは狭窄化させるのは、長年にわたって蓄積されたコレステロールが主な原因とされています。そのため心筋梗塞の患者は50歳以上の人が多いのですが、近年では、若い世代の人が心筋梗塞を突然発症して死亡するという事例も少なくありません。

 

アテローム性動脈硬化症の進み方。(健康1+1/大紀元)

冠動脈をふさいで血流を妨げる「障害物」には、2種類あります。

下図をご覧ください。

「安定」と「不安定」。それぞれある動脈硬化プラーク。(健康1+1/大紀元)

 

1つは、血液中のコレステロールや脂肪が粥状(アテローム)となってできた物質(プラーク)が蓄積し、その箇所でかたまって硬化あるいは線維化したものです。

これは「安定プラーク」と呼ばれ、高齢者に比較的多いとされています。通常「プラーク」と略称される動脈硬化プラークはこちらのほうです。

 

若い人にも起こり得る病気

もう1つは「不安定プラーク」と呼ばれるもので、表面は薄い膜のようで柔らかいのですが、内側に「脂肪の池」をもつような形状をしています。

こちらは若い人にも起こり得ます。
安定プラークのように血管をひどく詰まらせるケースは少ないのですが、不安定プラークが突然破裂すると、なかに溜まっていた脂肪などの物質が一気に血中へ放出されます。

その物質が冠動脈を完全に閉塞させるため、普段は健康に見える人が突然ばったり倒れるような急性の心筋梗塞を発症するのです。

私たちの心臓は、片方の拳ほどの大きさです。一方、冠動脈は手の甲の静脈と同じくらいの太さで、直径が3~5ミリしかないため、小さなプラークであっても血流を滞らせ、詰まらせてしまうのです。

高齢者のなかには、心臓に長年の持病があって狭心症を繰り返し、何度も入院しますが、病院で治療してまた元気に戻ってくる人もいます。これに対して、元気そうに見える若い人が、突然、心筋梗塞で倒れ、急死することもあります。

このような不思議な現象には、上述した「安定」と「不安定」という2種類の動脈硬化プラークの違いが関係しているかもしれません。

 

血管内壁に「べったりつく」粥状の物質

アテローム性動脈硬化プラークの形成過程は、なかなか複雑です。

プラークの内部にはコレステロールがあり、免疫細胞の断片が混在しています。その周囲には様々な免疫細胞があり、平滑筋細胞および線維芽細胞が集積しています。

 

アテローム性動脈硬化プラークの成分。(健康1+1/大紀元)

 

血管の構造のなかで、もっとも血液に近い部分を内皮細胞といいます。
内皮細胞は、血管のしなやかな張力を維持するとともに、免疫反応の調整および血管平滑筋増殖の抑制にも重要な働きをします。また内皮細胞は、血小板の過剰な凝集を抑え、血栓の形成を予防します。

ところが、加齢とともに血管の弾力性が乏しくなると、血圧上昇時に血管の内皮を破損することがあるのです。

この時点で、一部の単球(白血球の一種)は内皮の損傷部に引き寄せられ、動脈壁に侵入してマクロファージ(侵入した細菌などの異物を捕食して除去する白血球)となります。

ところが、そのマクロファージがコレステロールを「異物」と認識して飲み込むと、どうなるでしょうか。それは、泡沫細胞となって血管壁に沈着し、徐々に積もってプラークとなるのです。この不要の産物であるプラークは、各種の炎症、線維化、および石灰化も引き起こします。

アテローム性動脈硬化プラークが、次第に大きくなる過程。(健康1+1/大紀元)

 

(次稿に続く)
(翻訳編集・鳥飼聡)

鄭元瑜