古代の名医が推奨する「足湯」夏バテにも効きます

膝から下の部分だけお湯に浸けることを、日本の温泉地や観光地では足湯(あしゆ)と呼び、介護や看護の場面では足浴(そくよく)と言ったりします。

いずれにしても、とても気持ちが良いものであり、疲労回復やリラックス効果も得られますので、健康法の1つとして日本でもよく知られています。

「神医」が推奨した足湯

中国伝統の漢方医学でも、養生法としての足湯は古くから存在します。

3世紀はじめの後漢末に、華佗(かだ)という有名な医師がいました。
薬学や鍼灸術にも卓越していた華佗は、「麻沸散」という麻酔薬をつかった腹部切開手術まで行い、中国史上の「神医」とも称されました。

華佗は、その名声を買われて曹操の典医も務めます。ある日、華佗は自身の透視力をつかって、ひどい頭痛が続く曹操の脳に腫瘍があることを発見します。華佗は、曹操の腫瘍を除去するため開頭手術をしようとしますが、自分の命を狙っていると勘違いした曹操によって投獄され、そのまま獄中で死にます。

さて、その華佗の著作の1つである『華陀秘笈(かだひきゅう)』のなかに「足心道」つまり人体における足部の重要性を述べた記述があります。

それによると「木は枯れる前に根が尽きる。人は老いる前に足が衰える」として、人間の老化は足の衰えから始まるので、足を十分に養生することが大切だと説いています。

さらに華佗は、足湯による養生効果について「春夏秋冬、どの季節にも有効である」としています。

例えば、「夏は、暑さも湿気もひどくて食欲がなくなり、疲れやすく、イライラするなどの症状が出る。そこで足湯をすると、暑気払いの作用があり、気持ちも奮い立ち、食欲が増進されて、睡眠の質も良くなる」と言うのです。

「薬を飲むより効果的」

北宋の文人・蘇東坡(そとうば)も、足湯による養生を重視していました。

蘇東坡は、足湯を継続的に行うことは、薬を服用するよりも養生効果が高いと考えていたようです。実際に本人がそれを実行してみた結果、「足湯の効果は薬の百倍である」と述べています。

さらに、中国史上で最長寿の皇帝であった清朝の乾隆帝も、足湯を愛好していました。
乾隆帝は、自身の養生法について「朝、起床したら300歩あるく。夜、就寝前に一鉢の足湯をつかう」と総括しています。

現代科学は、人間の両足に、各臓腑や器官に対応する「反射区」が存在することを明らかにしています。そうした足裏のツボを指圧する以外に、お湯に足を浸すことによってもこれらの反射区を刺激することができます。

足湯は全身の血液循環を促進し、体内の各器官の機能を向上させるとともに、内分泌系を調整し、病気を予防することができます。そのことは、多くの病気の治療に際しても、安全で非常に良い補助作用を発揮するのです。

ゆったり気分で長く続ける

足湯は、漢方でいう外治法(がいちほう)に属し、漢方医師がよく選択する方法です。

お湯の中に、それぞれ効き目の異なる漢方薬を加えることで、足や腰、肩、首などの痛みを緩和できるほか、神経の痛みや婦人科系の症状、女性の更年期障害にも優れた改善効果を発揮するのです。

家庭で足湯をする方法は、実に簡単です。
片足が入る容器を2個、または両足が入れられる大きな容器を1個用意してください。容器は深目がよく、せめて下腿(ふくらはぎ)の半分くらいまでは欲しいところです。

湯温は、熱すぎる必要はなく、体温より少し高い38〜43度くらいが適温です。
足を浸す時間は20〜30分ほど。数分間などの短時間では効果が期待できませんので、心身ともにリラックスできる、余裕のある時に設定してください。足湯は、根気よく、長く続けてこそ、養生や病気の治療効果が得られるのです。

家庭で行う足湯には、血液循環を促す「白酢」、寒気を除く「生姜」、睡眠を助け老化を防ぐ「塩」などを、用途に応じて適量入れると、さらに効果が良くなります。また足湯は、運動と同じように軽く汗をかきますので、食事の1時間後に行うのが良いでしょう。

なお、妊娠中または生理中の女性、および糖尿病患者は、足湯を行うことは可能ですが、体調をよく見て慎重に判断してください。

(翻訳編集・鳥飼聡)