チベットの光 (12) 悪因悪果

 ウェンシーが呪法を修してから十四日目、叔父ヤンツォンの長男が結婚式をあげることになり、宴会に多くの客人が招かれた。以前、叔父夫婦とともにウェンシーたちを馬鹿にしていた人たちもすべて招かれ、それら総勢三十人以上が叔父の家で祝賀の杯をあげた。ウェンシー親子に同情的だった人たちも招かれ、彼らは叔父の家への道すがら、このことについて議論となった。

 「みてみろ!ヤンツォン・チャンツァイの息子の結婚式の派手なこと!あれは本来、ウェンシーのものだったのに…彼こそが一年以上前に、同等の派手な結婚式をあげて嫁をもらうはずだったのだ。それが今ではどうだい…彼には何もないし、独身のままで、どこかに行っちまって、呪法を学んでいるというじゃないか」。別の一人も不満そうに、「あの宴席の派手なのを見てみろ。全く恥知らずな!人の財産を奪うばかりか、元の主人まで虐待しているのではないか。例えミラ・チャンツァイが残した遺産を半分ぐらい奪ったとしても一生使い切れないのに、なぜあんなにウェンシーたちを苦しめるのか理解できない」

 「間違いない。こういった悪人の良心は犬にでも食われているのだろう。ウェンシーが呪法を学びに行っているというが、もしそれが成功しなかったとしても、遅かれ早かれ天がこれを滅ぼすだろうよ」

 彼らが憤懣やるかたなしといった風情で、因果応報について議論していた矢先、思ってもみなかった消息が伝わってきた。叔父ヤンツォンの家屋が倒壊し、三十五人が圧死したというのだ。「あのようによくできた家屋が、なぜ突如として倒壊したのか?」全村民が来て叔父の家を見てみると、がれきのうえに濛々とした灰塵が舞い上がり、その下の遺体を掘り出すには大変な労力がいるようだった。

 村民らは輪を作り、さもありなんといった風情で議論を始めた。

 「これは悲惨すぎる光景だ。この人たちはヤンツォンの親友たちばかりではないか。他人の財産を奪って飲食を享楽していた時は得意満面だったのに…。今では死人に口なし、一瞬の間だ」

 「全くだ。人生は無常だ。富貴も長くは続かない…」

 「人は悪いことしているとき、自分の将来や後代について考えるべきだ」

 皆が議論していると、一人が口を開いた。「それは、馬が蹴ったからですよ…」

 それを聞くと、皆が口をつぐみ、その人の方を見た。彼は叔父の家の使用人だった。「ご主人の家の一階は、客人の馬がつながれて満杯でしたけど、その日はなぜか馬たちが落ち着かなかったので、なだめようと門戸にいってみたのです。すると、一匹の牡馬がある雌馬にちょっかいをかけていて、その他の牡馬たちが昂奮してしまったのです。その騒ぎは大変なもので、そのときにこの雌馬が怒って、牡馬を蹴ろうとしたのですが、牡馬が身をよけたために、その雌馬の後脚が柱にあたって、柱が倒壊したのです。私もこれはまずいと思い、脱兎の如く走りだし、息をもつかせずに振り返ってみてみると、家屋がすでに崩落していたのです」。使用人は目を見開き、わなわなとふるえていた。

 (続く) 
 

(翻訳編集・武蔵)