THE EPOCH TIMES

英国バイリンガル子育て奮闘記 (73)皆既日食(1999年8月)

2011年02月07日 07時00分
 【大紀元日本2月7日】1999年の8月に皆既日食があった。皆既日食を見ることができる経路が、なんと、地元コーンウォール州のセント・ジャストという小さな小さな村にかかるということで、夏休みの稼ぎ時でもあり、この時期、自分の家を人に貸せば高いお金がとれるという話も持ち切りで、皆落ち着きのない様子だった。

 こんな田舎にBBCの有名なアナウンサーがやってきて、隣町のホテルを陣取り、野外のビーチにはBBCの女性レポーターを配備。皆既日食の予定時刻は午前11時ごろだったと記憶している。夏休みの子どもたちには絶好の余興だ。

 BBCの生中継を見ていたら、娘のクラスメートの男の子が二人、人ごみに混じってカメラ映りの良い場所を陣取り、手を振ったりしていた。

 皆既日食を直接見ると、暗い部分と明るい部分の差が激しすぎるため目がつぶれるという指導が盛んで、私の方は、銀紙の貼られた紙製の眼鏡も事前に入手しておいた。

 しかし、騒ぎが大きければ大きいほど、興ざめするというあまのじゃくな娘は、トイレにこもると宣言。皆既日食の始まる前に、クラスメートから「アン、本当にトイレに入ってる?」という電話までもらった。

 興ざめしたのは娘だけでなく、お天道様も同じだったようで、皆既日食が始まる寸前に黒雲が空を覆い、大雨になってしまった。ビーチで陣取るレポーターは大きなパラソルの下で地元の人々にインタビューしていた。BBCの生中継は、こういうこともあろうと、衛星で雲の上からとらえた皆既日食の映像を流していた。

 私と夫は港を見下ろす場所に出て(娘はトイレに入ったままなので)、太陽は見えずとも雰囲気を味わった。わずか数秒で気温が急速に下がり午前11時なのに夜になってしまった。カモメが狂ったように鳴きながら飛び回った。そして物見高にやってきた人々のカメラのフラッシュが無数に点滅。数秒後にまた気温が上昇し明るくなった。日本の神話にある、天照の神が岩穴に隠れてしまったという下りを体験させてもらった。たとえ大雨でも、太陽というのは地球に暖かさと光を与えているのだ。

 この10年後、2009年の7月末、日本に滞在する機会があった。南の悪石島で皆既日食が見えるとかでキャンプをしている人々がテレビ中継されていたが、あいにくの大雨。10年前の英国の南西端での体験が、目の前に再現されたようだった。「この皆既日食は心の清らかな人しか見ることができないんですよ。ほとんどの人は見えないでしょう」というレポーターの言葉に笑ってしまった。英国も日本も清らかさからはほど遠い、「欲」の絡んだ土地柄のようだ。

 (続く)

 著者プロフィール:

 1983年より在英。1986年に英国コーンウォール州に移り住む。1989年に一子をもうけ、日本人社会がほとんど存在しない地域で日英バイリンガルとして育てることを試みる。

関連キーワード
^