寛容と我慢

自分を批判した人を褒める心

中国の宋の時代に、呂蒙正氏は2人の皇帝の下で、3回も宰相を歴任した。彼の度量は海のように広大であるとたたえられ、厚い人望の持ち主だった。呂蒙正氏と学友の温仲舒氏は、同じ出世道を歩んだが、温仲舒氏は在職中に汚職により、官位を剥奪された。

呂蒙正氏が宰相に就任した後、彼の才能を重用するよう、皇帝に温仲舒氏を推薦した。役職に復帰した温仲舒氏は、自分を誇示するあまり、度々皇帝の前で呂蒙正氏をけなした。さらに、呂蒙正氏が皇帝に怒られたときに、火に油を注ぐようなこともした。当時の同僚たちは、非常に温仲舒氏を軽蔑していた。

ある日、呂蒙正氏が温仲舒氏の才能を称賛していると、皇帝は、「あなたはいつも彼を褒めるが、彼はいつもあなたを一文の値打ちもない者のように批評している」と言った。呂蒙正氏は微笑んで、「陛下が、この私を宰相の地位に置かれる理由は、私が人の才能を判別でき、人材の重用ができるからでございます。人が私のことをどう言おうと、関係ございません」と答えた。それを聞いた皇帝は大笑いし、ますます呂蒙正氏を重用するようになった。

(編集・望月 凛)