【簡美育作品集】『静観』・その五

【大紀元日本6月18日】花々は輝きを放ち、それは希望を意味し、背景の光は強い力を表している。時空や人事といったものの変化の積み重ねが、この花に生命力を与えたようにも彷彿される。対照的な周囲の暗部は、伸びやかに天上に向かっていく。ほころんだ花の色艶は、見るものの心を励まさずにはいられない。

 このようなことこそ画境であり、作画における心境とも言えるのではないかと思う。自然というものを追求する上で、さらに重要なことは、絶えず自己を追及することにある。芸術とは、絶えず暗黒を突破し、光明に向かって進む歴程とも言える。

白の蓮(38cm×40cm/1999年)

台風の夜に、チャイコフスキーの『白鳥の湖』を聞き、引き込まれたことがあった。バレリーナが舞っているかのような白い蓮の花は、風雨という自然の洗礼を、自己への鍛錬と見なしているかのようである。蓮の葉の下から、頭を突き出した蛙は、画家が頭角を現し始めることを、待ち望んでいるかのようである。

白い蓮(38cm×40cm/1999年)

花の背後にある黒く重厚な葉は、虚無を表している。表面を現さないことで、返って内包という存在を感じさせるものであろう。それは生命のもつある種の境界とも言える。花草の気質を、客観的に表現することは難しい。しかし、画境というものが、見るものに想像への空間を提供している。

二輪の花は互いに寄り添い、二匹の蛙が重なり合うことは、感情への渇望と追求を表している。しかし、この作品の画境は、孤独で静寂であり、一枚の花びら、一滴の雫が落ちたとしても、その中の世界を驚かせることであろう。

*画家のプロフィール  簡美育:画家、1953年台湾省南投生まれ。台湾密画の画法による花鳥絵画を得意とする。幼少時から絵画に親しみ、台湾芸術大学美術科卒業後、1987年台北市立美術館で初の個展を開催。20二十数年の間に、その画風はしばしば変更されたがをえてい、近年の制作された密画の画法による作品群は、台湾美術界にで絶賛された。完璧な構図及び技法に加え、西洋絵画の明暗法も取り入れられているのが、その特徴となっている。一連の作品は、「万物を静観すれば、自然にその内在する生命力の強さがわかる」という、独自の自然観に基づいている。代表作の『竹雀図』は、歴代における竹雀の密画絵画の中でも、宋の巨匠徴宗に次ぐ名人作だと言われています。代表作である『竹雀図』は、歴代の竹雀密画作品中、宋の巨匠・徴宗に次ぐものと、高く評価されている。)

(廖雪芳執筆)