【大紀元日本4月18日】

赤子枕台湾国立故宮博物院所蔵)

中国では、宋朝(960-1279年)、金朝(1115-1234年)の時代に、小型の磁器製枕が広く流行した。単純な直方体のものから、「吉祥如意」を表す虎や如意雲といった凝った形のものまであり、ここで紹介する「赤子枕」も形が凝った部類に入る。赤子のデザインは、特に宋の時代に広く流行し、北方の青磁系、景徳鎮の影青磁、凝った技法の磁州窯系、そして写真の「赤子枕」の定窯系では、赤ん坊或いは子供が遊び戯れるデザインが均しく見て取れる。

定窯は、現在の河北省曲陽県で作られる磁器で、この地は古くには定州とよばれたことから、ここの磁器を定窯という。白い釉(うわぐすり)は黄色がかって象牙色を呈し、浅刻型、深刻型、鋳型などの装飾技法を持ち、題材が豊かで、線はなめらかであり、作品は生き生きとしている。

写真の磁器枕では、寝台の上に横になった赤ん坊が、交差させた両手を枕にして頭を少しもたげている。広い額に、丈夫そうな体の赤ん坊である。両足は曲げて交差させ、とてもゆったりとした様子である。手には絹のリボンが通された玉のようなものを持ち、玉の上下は蝶結びで固定されている。赤ん坊の顔は写実的ではっきりしておりかわいい表情をしている。衣服は今日風に言うなら、長い袷(あわせ)の服を着て、その上にベストをはおり、長ズボンに布靴を履いている。ベストの前側にはお金の紋様が装飾され、背中側には牡丹が描かれている。袷のたもとには円形の花模様が描かれているが、袖と長ズボンには紋様はなく、異なった生地を縫い合わせたことがわかる。寝台の回りには竜紋が刻まれており、底には釉を使用しておらず、乾隆皇帝の詩が刻まれている。

「赤子枕」は、台湾の国立故宮博物館に2つあり、北京の故宮博物館も1つ所蔵している。この3つは造型が均しく似ており、細部の技法、紋様、寸法に少し相違がある以外は、表情、服装飾具、皺などほとんど一致している。当時、基になる「赤子枕」があり、その類似品が提供されたものと考えられる。

(蔡本雄)

(注:文・写真:台湾国立故宮博物院からの転載
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