微笑みの魔力

【大紀元日本7月21日】カリフォルニアの巨大な水晶教会堂は、復活祭のためにきれいに飾りつけられ、2400人の人が静かに座っています。私は教会堂の室内のバルコニーに立って、係の人が私に安全ベルトを着けてくれるのを見ていました。まもなく私は、1本のロープで天井から吊るされ、空を飛ぶ天使として、復活祭の盛典でパフォーマンスを演じます。

2年前テレビで復活祭の盛典を見て以来、私はぜひこの盛典に参加したいと思っていました。それは私がこれまで見た中で最も盛大な盛典で、中でも一番夢中になったのが、舞台の上を飛び回る天使でした。子供時代に天使になる夢を見たことのない女の子がいるでしょうか?今私はバルコニーのへりに立って「飛び立ち」を待っています。係りの人が私の安全ベルトをしっかりと結び、ロープをピンと引っ張りました。私は急に緊張しました。そのロープは私の重さに耐えられるのだろうか?万一切れてしまったらどうしよう?係りの人は私の気持ちがわかったようで、「心配しなくてもいいよ。これまで失敗したことなんてないんだから」と、私を慰めてくれました。

私は2年前から天使役の面接試験に参加していますが、いつも一次試験で落ちてしまいました。面接試験では、ダンスの先生が私たちに教えてくれた短いダンスをまねるのですが、私はダンスが得意ではなく、とてもぎこちなく不器用になってしまいます。それで、三年目はもう受けるのをやめようかと思っていました。ちょうどそのとき、連続2回天使に選ばれたことのある友だちが、私にそっと面接に受かる秘訣を教えてくれました。「面接試験のときの秘訣は、面接官の目を見ながら微笑むこと。そうすれば、あなたがどんなにダンスが下手でも、面接官はそれに気づかないから」。

私は半信半疑ながら、友だちの言う通りにしました。ステップがよく分からなくても微笑み、腕がなめらかに伸びなかったときも微笑み、回る方向を間違えても、にこっと微笑みました。微笑んだからといって、私がすばらしいダンサーに変わるわけではないんだけれど、面接の間ずっと楽しい気分でいられました。私はもう、自分の演技がすばらしいかどうかなんて気になりませんでした。完全に天使になりきっていたのです。私は空中を高く飛んでいるような気分になり、自分の美しさを誇らしく思いました。

「12番!」面接試験が終わって、ダンスの先生が私の番号を呼びました。「そのまま残って2次面接に参加するように!」私は成功しました。その時私はやっと、頬が両足と同じように痛いのを感じました。これが微笑みの代償かも知れません。

数週間の厳しい訓練を経て、私は今ついにバルコニーのへりに立っています。今ここから飛び立つのです。興奮しているためか、裸足の両足にちくちくしたものを感じます。私は大きく深呼吸すると、先生が私たちに教えてくれた空中での動作を思い出しました。「バレエの構えからスタートし、腕は後ろから伸ばし、肩は下ろす。そして、胴体は必ずぴんと伸ばしておくこと。そうしなければ、空中でくるくる回ってしまいます!」

他の天使たちはすでに何年も訓練を受けているけど、私は今回が始めてです。「準備はいい?」係りの人が尋ねました。私は心の中で自分を慰めました。「あなたには係りの人がついているし、丈夫なロープと安全ベルトがある。それに、何週間も練習を重ねてきたし、友だちの応援もある」。「準備できました」。私は係りの人に言いました。私はお腹に力がかかり、軽く引っ張られるような感じがしたかと思うと、空中に飛び立っていました。心は喜びでいっぱいでした。私はどんどん高く舞い上がり、バルコニーより高く上がりました。私は両腕を伸ばし、微笑み始めました。この自由に飛び回るすばらしい感じに優るものはありませんでした。

パフォーマンスはとても順調に進みました。観客の上を飛ぶとき、私は小さなミスをしたかもしれませんが、そんなこと、誰も気にしません。私はそんなことを全部頭から追い払い、ただただ空中を楽しく舞う微笑みの天使になりきっていました。

翌年、私はカリフォルニア州から引っ越したので、それ以来復活祭の盛典に参加することはありませんでした。でも、どこへ行こうとも、疑いや恐れが襲いかかって来たとき、私はいつも自分に微笑みかけます。そうすれば、私に再び自信がみなぎってくるのです。微笑みはなんとも不思議な魔力を持っています。