寛容が友情を育てる-リンカーンの少年時代の逸話

【大紀元日本6月30日】アブラハム・リンカーン(Abraham Lincoln、1809~1865)は幼いときから家が貧しかったため、12歳のときに学校をやめて森林を伐採する仕事に就いた。毎回、自分が倒した樹木に自分の頭文字「A」を刻んでいたが、ある日、自分が伐採したはずの樹木に「H」の文字が書かれていた。明らかに、何者かが彼の仕事を盗んだのだ。

リンカーンは不快に思い、家に戻ると継母に事情を話した。「絶対にヘンデルのやつの仕業だ。彼の家に行って文句を言ってくる」という。継母は、「急がなくていいから、まず座ってこれから話す物語を聞きなさい」とリンカーンを座らせた。それから継母は、猟師バンプの伝説を語り始めた。

・・・昔々、大きな森にバンプという猟師が住んでいた。彼は森に罠を仕掛け、ほぼ毎日のように獲物を捕まえていた。

ある日、彼が仕掛けた罠を回収しに行ったときのことだった。罠のあった場所には動物の毛が散らばっていたが、獲物の姿がどこにも見当たらなかった。

だれかに獲物を盗まれたに違いない。怒ったバンプは、怒り顔の絵を描いて罠の上に置き、そのまま帰った。翌日、罠を回収しに行くと、その上に不思議な絵があるのを発見した。仕掛けの上に大きな葉っぱがあり、その上に円が描かれ、円の中には小屋と吠えている犬が一緒に描かれている。バンプは絵の意味が全く理解できなかった。「人の獲物を盗んだのに、なぜこんな絵を描くんだ?」と納得できず、彼は相手と対決すべきだと考えた。正午の太陽が一番高い時に二人が罠のそばに立つ、という絵を描いて、それを罠の上に置いた。

3日目の正午、バンプがそこにやって来ると、全身に野生の鶏の羽を身に付けた一人のインディアンが彼を待っていた。互いに言葉が通じないため、二人は身振り手振りで対話を試みた。インディアンは、「ここは私たちの縄張りで、あなたはここに罠を仕掛けてはならない」という。バンプも、「これは私が仕掛けた罠だから、あなたは私の獲物を盗んではならない」と言った。お互いの身振り手振りの仕草が忙しなくこっけいで、2人とも腹を抱えて笑いだした。バンプはその時、ふと思った。「敵を一人増やすよりも、友人を一人作る方がいい」。バンプは、気前よく自分の罠を相手に与えた。

ある日、バンプは狩りの途中に狼の大群に追いつめられ、崖から飛び降りた。彼はそのまま気を失っていたが、ふと目を覚ますと、インディアンが住む部落のテントの中だった。傷口はすでに薬草で手当されていた。その後、バンプはインディアンと無二の親友となり、一緒に狩りを行うようになった・・・

継母はリンカーンに物語を話し終えると、微笑みながら彼に聞いた。「バンプの決断は正しかったと思う?それとも・・・」

「うん、彼の決断は正しくて素晴らしかったと思う。それで敵がいなくなり、友人が一人増えたのだから」とリンカーンは答えた。

「そうね。ほかの人に寛容で受け入れることを学ぶべきね。そうすることで、自分の道はますます広くなるはず。そうでなければ、至るところに敵を作り、成功することがとても難しくなるのだから」

「よく分かった。おかあさん」とリンカーン継母に頷いた。

それからリンカーンは継母の教えをしっかりと心に刻み、寛容な心を大切にした。

 (翻訳・叶子)