子供の教育に役立つ 心に残る9つの物語 (上)

【大紀元日本11月14日】古代中国では身を修めることが重んじられ、子どもへの教育は、人格を磨き、訓練することが重要視されていた。それに関連する逸話や物語はたくさん伝えられており、現代人にとって学ぶ価値の高い内容のものも残っている。その中の一部を、ここに紹介する。

*老禅師、無言の教育

昔、一人の老禅師がいた。ある日の夜、師が禅庭の中で散歩していたところ、寺院の塀ぎわにひとつの椅子が置かれているのを見つけた。寺院の戒律に背き、誰かが塀を乗り越えて出かけたということが、一目瞭然だった。老禅師は騒ぎ立てることなく静かに椅子を移動してその場所にしゃがんだ。

小一時間もすると、塀の外でなにやら物音が聞こえてきた。暗がりの中、一人の小坊主が、寺院の塀を乗り越えて、老禅師の背中を踏んで飛び降りた。その瞬間、自分が踏んだのは椅子ではなく、師であることに気がついた小坊主は、驚きのあまりその場に立ちすくんでしまった。師にとがめられ、処罰を受けることが一瞬頭をよぎった。

ところが、思いがけず師は彼を厳しく責めもせず、とても落ち着いていた。「深夜は冷えるので、早めにもう一着羽おったほうがいい」とその声は、とても優しかった。

*張伯苓氏、自ら手本となる

南開大学の創設者の1人で、中華民国考試院院長を務めた張伯苓(ツァン・ブォーリン)氏は、教育家であり、政治家でもあった。彼はマナー教育を非常に重視し、生徒たちの模範となるよう自らを厳しく律していた。

ある日、張氏はある生徒の指が喫煙の習慣のために黄色くなっているのを見つけた。彼は、生徒に対して「タバコは体に悪いから、やめるように」と厳しく忠告した。その生徒は少し不満げな様子で、「では、先生ご自身は喫煙をされて、体に害がないのですか?」と言い返した。張氏はすぐに他の人に頼んで、自分の葉巻とタバコを取ってこさせ、皆の前でそれをすべて捨て、長年愛用していたキセルも折ってしまった。そして、張氏は真摯な態度で、「これから、私も生徒の皆さんと一緒にタバコをやめます」と宣言した。その後、張氏は宣言通り、二度とタバコを吸わなかった。

*陶行知氏、4つのアメの力 

教育家の陶行知(とうこうち)氏が校長を務めていた時の逸話である。ある日、陶校長はある男子生徒がレンガでクラスメートを殴ろうとしているのを目にした。陶氏はケンカを止め、この生徒に校長室に来るよう促した。

陶校長が事務室に戻ってくると、生徒はそこで待っていた。陶校長は、「君は私より早く着いて待っていてくれたから、ごほうびをあげよう」と言って、アメを男の子にあげた。続けて陶校長は、「君は私が止めに入った時、けんかをすぐにやめたね」と話し、この生徒に2つ目のアメをあげた。さらに、「君がけんかをしようとしたのは、その子が女の子をいじめていたと聞いたからで、君の正義感にごほうびだ」と言って3つ目のアメをあげた。

そのとき、この生徒は「校長先生、ごめんなさい。クラスメートが間違ったことをしたにしても僕は彼を殴ってはいけませんでした」と謝った。陶校長は生徒に、君が反省したからと、4つ目のアメをあげた。

(翻訳編集・李頁)