【味の話】 土用の丑の日

【大紀元日本6月15日】昔から「土用の丑の日に鰻を食べて夏バテを防ぐ」などとよく言われていますが、土用の丑の日ってなんの日?なぜ鰻なの?と思っている方も多いことでしょう。

そもそも土用とは、陰暦で立春・立夏・立秋・立冬の前の18日間を言い、それぞれ春の土用、夏の土用、秋の土用、冬の土用があります。土用って夏だけだと思っていたかもしれませんが、実は全ての季節にあるのです。

中国の陰陽五行説(木・火・土・金・水)で四季の春を木気、夏を火気、秋を金気、冬を水気に当てはめ、各季節の終わりの18日間に土気を当てたと言われています。異なる季節の間に「土用」を置くことで、消滅する古い季節と、まだ十分に成長していない新しい季節の性質を静かに交代させる働きをするそうです。

丑の日についてですが、暦では十二支を毎日に当てて、今日は子の日、明日は丑の日というふうに言い、土用の間の丑の日にあたる日を土用丑の日と言っています。なかでも夏の土用丑の日は梅雨明けと重なることも多く、気候も体調も変化する時期なので、夏に向かって栄養のあるものを食べたり、「丑湯」に入ったり、梅雨で湿った衣類などを乾かす「土用干し」をして過ごすようになり、「土用の丑の日」といえば、夏の土用を指すようになったそうです。 土用の丑の日は、本格的な夏の暑さに見舞われるころです。そこで、夏バテをしないよう精のつくものを食べるようになり、「土用うなぎ」「土用しじみ」「土用餅(もち)」などの言葉も生まれました。

やがて丑の“う”にあわせて「う」のつくものを食べると夏に負けないという風習となりました。「う」のつく食べ物と言えば、冒頭にあります「鰻」が有名ですが、うどん、梅干し、瓜などもあげられます。「鰻」は疲労回復に効果があるビタミンAやB、エネルギー源となる脂質やたんぱく質が豊富です。「うどん」は夏の暑さで食欲がない時でもあっさりして食べやすく、消化吸収に優れています。「梅」はその酸味で唾液の分泌が促進され、食欲不振を解消し、エネルギー代謝を高める働きがあります。また、瓜類の西瓜(すいか)、胡瓜(きゅうり)、冬瓜(とうがん)などは、体内の余分な熱を冷ます効果があります。 なるほど暑さに負けないよう「う」のつく食べ物を食べるというのには、それなりの理由があったというわけですね。

では、なぜ鰻を食べる風習だけが一般的になったのでしょうか?由来はいろいろあるようですが、平賀源内の説が有力だそうです。ある鰻屋が「夏の暑い時期に、火で焼いたうなぎの蒲焼など食べに来る客はいないので困っている」という相談を源内に持ちかけます。そこで源内は、丑の日には「う」のつく物を食べると夏負けしないという言い伝えを元に鰻屋に「本日 丑の日」と書いた貼り紙をお店に貼ることを提案します。 そして、博学な源内先生のいうことなら間違いないということで庶民に受け入れられ、鰻屋は 大繁盛します。当時、それを見た他の鰻屋も真似をするようになり、「土用の丑の日にはうなぎを食べる」ことが定着したということです。ちなみに、今年の土用丑の日は7月21日になります。今年は節電でより暑い夏になることでしょう。冷房に頼らずに暑さを乗り切れる忍耐力と体力が必要のようです。

(文・大鬼)