魚を食べることは健康面で多くの利点がありますが、細かい骨が多いため、不注意で喉に刺さることがあります。このようなケースは珍しいものではなく、刺すような痛みや咳だけでなく、吐血や窒息を引き起こしたり、重症化すると敗血症につながる可能性もあるため注意が必要です。
イギリスのランカスター大学の解剖学教授アダム・テイラー氏は、「The Conversation」への寄稿で、魚の骨が喉に刺さることは救急外来を受診する理由として非常によく見られるケースのひとつだと述べています。特にアジア諸国では魚を頻繁に食べる食文化があるため、この現象が多くみられるとされています。
テイラー氏によると、よく食べられるタラには細い骨が約17本、サケには約30本あり、ウナギの骨も喉に刺さりやすく救急受診につながることが多いといいます。さらに、ヒラメは骨の数が多くサイズも大きいため特に注意が必要で、喉の奥に刺さりやすいとされています。
魚の骨は、喉の奥にある扁桃、口腔の奥の咽頭、嚥下の際に働く小さなくぼみである梨状窩、そして咽頭と胃をつなぐ食道に刺さることが一般的です。
もし魚の骨を誤って飲み込むと、咳や喉に「何か詰まったような感覚」、痛みや嚥下困難、さらには吐血などの症状が現れることがあります。
しかし、必ずしもすべての骨が症状を引き起こすわけではなく、本人が気づかないまま喉に骨が刺さっている場合もあります。たとえば2012年には、69歳の日本人女性が首の腫れを訴えて受診したところ、喉に長さ32mmの骨が9か月間刺さったままになっていた事例がありました。
見つからなかった骨は首の中で移動することがあり、繰り返し嚥下することで骨が食道壁を突き破って首の狭い隙間に入り込み、重要な神経や血管――たとえば脳へ血液を送る主要血管である頸動脈――に危険を及ぼす可能性があります。
骨が甲状腺を突き刺し、膿瘍や炎症を起こすこともあります。また稀ではありますが、敗血症へと進行する可能性もあり、非常に危険です。
場合によっては、刺さった骨が首の筋肉や皮膚の下に入り込むことがあり、最近タイで起きた例のように、皮膚の外に出てきてしまうケースもあります。
さらに、移動した骨が心臓周囲に感染を起こしたり、脊髄に入り込み二次感染を引き起こしたり、麻痺につながる可能性もあるため、魚の骨を誤って飲み込んだ場合は、できるだけ早く取り除くことが重要とされています。

魚の骨を飲み込んでしまったときはどうすべき?
刺さった骨を取り除く方法はいくつかありますが、多くの場合は医師による処置が必要になります。
人によっては、強く咳をするだけで骨が取れることもあります。これは骨が食道ではなく気道に引っかかっている場合に最も効果的とされています。しかし、咳で骨が取れずに胃や腸へ押し込んでしまい、腸に穴が開くリスクが生じる可能性もあります。
食道壁に刺さった骨が自然に排出される場合もありますが、多くは内視鏡による除去が必要になります。
パンやバナナを食べると骨が取れるという説もありますが、これを裏付ける科学的証拠はなく、むしろ気道や食道をさらに塞いだり、骨を深く押し込んで症状を悪化させる恐れがあります。
そのため、咳で改善せず症状が続く場合は、すぐに医療機関を受診することが最適です。
台湾・台北市立聯合病院中興院区の消化器内科医・李百純氏は、魚の骨が刺さった後にご飯を飲み込んだり酢を飲むといった対処法は誤りで、かえって悪化させる可能性があると指摘しています。正しい対処法は以下のとおりです:
1.すぐに食事を中止し、水をたくさん飲みます。
2.軽く咳をして、喉に刺さった魚の骨が取れるか試します。
3.上記で改善しない場合は、すぐに医療機関を受診します。
(翻訳編集 解問)
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