近年、妊娠中のタイレノール使用が自閉症リスクと関連する可能性が指摘されていますが、ある専門家は、さらに別の懸念点があると述べています。
ノースカロライナ大学の客員学者であり、WPLabのCEOとして10年以上自閉症研究に携わってきたウィリアム・パーカー氏はエポックタイムズに対し、アセトアミノフェン(タイレノールの主成分)は妊娠中の使用でもリスクが示唆されているものの、より多くの証拠が出生後の投与において、より大きなリスクを示していると語りました。
アセトアミノフェンと自閉症リスクの評価では、これまで主に妊娠中の使用に焦点が当てられてきました。
昨年9月22日に行われたトランプ政権下の記者会見で引用された科学レビューは、ハーバード大学やマウントサイナイ・アイカーン医科大学などの研究者によるものです。
「妊娠中のアセトアミノフェン曝露と、子どもの神経発達障害の増加との関連を示す証拠が見つかりました。この関連は、4週間以上の摂取で最も強く見られました」と、ハーバードT.H.チャン公衆衛生大学院の学部長であり環境健康学教授のアンドレア・バッカレッリ博士は、エポックタイムズに提供した声明の中で述べています。
これらの研究には、胎便や臍帯血中にアセトアミノフェンが存在することが、後年の自閉症スペクトラム障害や注意欠陥・多動性障害の診断と相関することを示したものも含まれています。
ドレクセル大学のブライアン・リー教授はエポックタイムズに対し、関連性を示す観察研究は複数存在するものの、因果関係を証明する研究は現時点では存在しないと注意を促しました。
「現時点で得られている最良の科学的知見は、妊娠中のアセトアミノフェン使用が自閉症を引き起こすとは示していません」と彼は述べています。
一方、バッカレッリ博士は、出生前曝露と神経発達障害との因果関係の可能性を支持する生物学的証拠があると指摘しました。彼は、出生前のアセトアミノフェン曝露が発達中の脳に影響を与えることを示した動物研究を例に挙げています。
アセトアミノフェンと自閉症との関連を否定する証拠の一つとして、2024年に発表されたスカンジナビアの研究では、使用と自閉症との関連が見られなかったと報告されました。
しかし、この研究については、最近のレビューでバッカレッリ博士と同僚が、真の影響を覆い隠す可能性のある統計的調整が行われているとして批判しています。
パーカー氏は、健康な子どもではアセトアミノフェンが自閉症を引き起こさない可能性がある一方で、生物学的な脆弱性を持つ子どもでは、アセトアミノフェンによる影響を受けやすい素因があると述べています。
喫煙者の中に、遺伝的要因や生活習慣によってがんになりやすい人がいるのと同様に、母親の健康状態や乳児の遺伝的感受性といった要因を十分に考慮しないと、アセトアミノフェンの真の影響が見えにくくなると、パーカー氏は説明しました。
出生後アセトアミノフェン使用
10年以上にわたり自閉症研究を行ってきたパーカー氏は、出生時および出生後のアセトアミノフェン使用からもリスクが示唆される研究があると、エポックタイムズに語っています。
アセトアミノフェンは、生後6か月未満の乳児に使用できる唯一の解熱・鎮痛薬とされています。
自閉症を発症した乳児について、パーカー氏は、アセトアミノフェンが健康上の脆弱性という背景の中で、引き金となる可能性があると述べています。
妊娠中は、アセトアミノフェンが母親と胎児の両方の肝臓で代謝されますが、出生後に赤ちゃんが母親の肝代謝から独立する時期が、最も脆弱な期間になると彼は指摘しました。
パーカー氏は、記者会見で紹介された研究を引用し、臍帯血中のアセトアミノフェン濃度が高い場合、低曝露群と比べて自閉症のオッズが3.6倍高かったとする研究が示されたと述べました。臍帯血中のアセトアミノフェンは、新生児が母親の代謝的サポートなしに薬物へ直接曝露されたことを示す指標とされています。
出生後の関連性を支持する証拠の一部は、スティーブン・シュルツ博士による初期研究にさかのぼります。彼は、自身の息子がMMRワクチン接種後にアセトアミノフェンを使用し、その後発達の後退と自閉症を示したことから、この関連性を調べ始めました。
親へのアンケートを基にした研究では、ワクチン接種後のアセトアミノフェン使用と自閉症との関連が見られましたが、使用しなかった場合には関連が見られませんでした。
割礼も自閉症との関連が報告されています。論文の研究者らは、割礼後の痛み緩和のために、パラセタモール—アセトアミノフェンの別名—が乳児に頻繁に投与される点を指摘しています。
自閉症の有病率は1980年代以降増加しており、これはアセトアミノフェンの使用や処方の増加と時期的に重なります。当時、子どもの発熱や痛みにアスピリンを使用するとレイ症候群を引き起こす可能性があるとする研究が出たことで、公衆衛生上の推奨がアセトアミノフェンへと移行しました。
しかし、パーカー氏は、乳児や子どもにおけるアセトアミノフェンの影響の全体像は、いまだ十分に検証されていないと述べています。
かつては、乳児や子どもも成人と同様に薬を処理できると考えられていました。アセトアミノフェンの毒性が成人では主に肝障害として現れるため、研究者は乳児の肝機能のみを確認してきました。しかし、実際には赤ちゃんの肝代謝は3歳頃まで成熟しません。
成人では、アセトアミノフェンは肝臓で、グルクロン酸抱合、硫酸抱合、酸化の3つの経路によって代謝されます。このうち酸化経路では、NAPQIなどの毒性代謝物が生成され、過剰になると肝臓や神経系に損傷を与える可能性があります。
乳児ではグルクロン酸抱合経路が非常に弱く、幼児期後半まで十分に機能しません。そのため、硫酸抱合経路が主な安全な代謝経路となります。
しかし、後に自閉症と診断される多くの子どもでは、この硫酸抱合経路も弱いとされ、結果として酸化経路への依存が高まり、毒性物質が蓄積するリスクが増す可能性があります。
「猫はこの[グルクロン酸抱合]経路を欠いているためアセトアミノフェンを与えてはいけません。では、なぜ赤ちゃんには与えるのでしょうか」と、パーカー氏は疑問を投げかけています。
通常、体内ではグルタチオンによって毒性代謝物が解毒されますが、研究では、自閉症を発症した子どもはグルタチオンの備蓄が少ない傾向があることが示唆されています。これは、基礎疾患や母親の健康状態が影響している可能性があり、その結果、毒素が十分に除去されないと考えられています。
今後は?
アセトアミノフェンは健康リスクや体内の酸化ストレスシステムへの負担を生じさせる可能性がありますが、解毒を助ける手段も存在します。
N-アセチルシステイン(NAC)は、アセトアミノフェン過量時の治療や肝障害予防に用いられる抗酸化物質です。NACはグルタチオンの生成を助け、毒性代謝物の除去に必要とされています。
ただし、子どもにおけるアセトアミノフェン関連の影響を防ぐ目的での有効性については、十分に検証されておらず、現時点では理論的な解毒手段にとどまっています。
妊娠中の女性にとって、アセトアミノフェンは使用可能な解熱・鎮痛薬の選択肢の一つですが、無条件に推奨されるものではありません。一方で、高熱そのものも母親や胎児にとって、神経管欠損や早産などの健康リスクを伴う可能性があります。
バッカレッリ博士は、同僚とともに、予防原則に基づいたバランスの取れた対応を勧めています。
「妊娠中に発熱や痛みの緩和が必要な場合には、医師と個別にリスクとベネフィットを検討したうえで、最低限有効な用量を、できるだけ短期間使用するべきです」と、彼は述べています。
(翻訳編集 日比野真吾)
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