【英国通信】 伝統と民族、そして現代の融合―五輪開会式

【大紀元日本7月31日】7月27日、ロンドン五輪が開幕した。その開会式は、7年間の準備期間を経て、世界をあっと言わせ、普段、自信を失いつつある英国人が自我を発見し自分を誇れるような一大イベントだった。

のんびりとした田園地帯とともに、アイルランド、スコットランド、ウェールズの映像が映る。英国は、異なる民族から成立していることが最初に全面に押しだされる。クリケット、シェークスピアと英国ならではの演出がみられる。まもなく、田園地帯から煙突が突き出してきて、時代は産業革命に突入。石炭の豊富だった英国は、他国に先駆けていち早く産業化の時代に入る。これまでの自然と融和した生活から、労働者と搾取者の違いが著しい社会へと移行する。労働者が錬った鉄が輪になり、その輪が空へと移動し、5つの輪が合わさり、五輪となる。その瞬間、滝のように火花がほとばしり出る。まさに圧巻。

英国史を語るだけに止まらず、英国ならではの伝統と、同じく英国ならではの エンターテイメントも融合。007が女王陛下をヘリコプターで迎え、二人はパラシュートで会場に降りる。(実際の女王陛下が007の映画に出てしまった!)そして、ピーターパンのテーマで現代の小児病棟が現れ、病気や悪夢を「悪」として、看護婦やメリーポピンズがそれらの「悪」を退治し、子供たちに安らぎを与える「善」の役割を果たす。

ウェブを発明したバーナード・リーも現れて、「これは全ての人のもの」というメッセージを流す。産業革命で貧富の差ができたけれど、ビートルズが枠を破り、インターネットが個人に力を与えた。

とにかく、老若男女、すべてが楽しめるように設定されていた。突然、選手の入場が始まり、「あ、オリンピックだったんだ」と思い出す。開会のスピーチ、そして7人の若手選手のたいまつがメタルの花びらに火をつける。一枚一枚の花びらに広がり、長い茎の部分から徐々に上に持ち上がって、最後に炎の花となる。世界が一つになることを象徴しているとナレーターは語っていた。

個人主義の固まりの英国で、この一体感はどこから来るのだろうか。 心から相手のことを思いやりたい。自らは省みず、人のために尽くしたい。他人に合わせるのではなく、自己の中に善悪の基準があり、良いと思ったことは、他人が馬鹿にしたり嘲笑しても、やり遂げる。

口にはださずとも、英国人の根底にこんな思想が流れているのを見いだした。上からの押しつけでないから、この一体感は実にパワフルだ。こんな土壌だけが生み出せる創造性と人間性。多くの天才を生み出す風土。英国の懐の深さを思い知らされた夜だった。

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