研究報告: 大気汚染で糖尿病のリスクが増加

【大紀元日本6月12日】大気汚染の深刻な地区(工場などの煙突の近くなど)に住む子供は、10歳になるとインシュリン抵抗性が引き起こす2型糖尿病の前兆が出やすいことが、最近の研究で明らかになった。

同研究は、ドイツ研究センターのヘルムホルツ協会(Helmholtz Zentrum)が欧州糖尿病学会誌「Diabetologia(ダイアビートロジア)」で発表したもの。排気汚染と児童のインスリン抵抗性の関係を調査する長期的な関係を予期的に調査する初めての試みだ。

大気汚染は人体の脂肪やたんぱく質に相互作用し、細胞にダメージを与えることで、体内で炎症を起こし、インスリン抵抗性を生み出す。インスリン抵抗性は2型糖尿病の要因の一つ。

研究は10歳の児童397人を対象とした。大気汚染の暴露レベルの研究後、各児童の採血検査を行ったところ、排気汚染物質濃度が高い地区に住む児童は、インスリン抵抗性も高くなるという結果が出た。空気中の二酸化窒素が1立方メートルに10.6マイクログラム増加することでインスリン抵抗性が検出される児童の数が17%増加し、空気中の微小粒子の6マイクログラム増加することで、インスリン抵抗性のある児童数は19%増加していた。

また、半径500m以内に汚染物質がある地域に住む児童はインスリン抵抗性の比率が7%上昇しているる。研究者はこれらの子供たちの15年後の状況を追跡し、今後の生活環境がこの比率に影響を及ぼすかを調査する予定だ。

今回の研究には、大気汚染による低出生体重が2型糖尿病の起因となっているかという調査も含まれていたが、対象児童は2500グラム以上の出生体重で、低出生体重との関連性は実証されなかった。

同研究報告のメンバーであるヨアヒム・ハインリヒ博士は、大気汚染が学齢児童のインスリン抵抗性の増加に直接起因するかを定めるためには,臨床的な意義のある研究が待たれているが、児童の置かれた環境に糖尿病の発生が関係していることは明らかだと述べている。

今回の研究には参加していないが、英キングス・カレッジで環境ヘルスを専攻とするフランク・ケリー教授は、「子供は大人に比べ、体内で占める肺の容積の割合比率が大きいので、大気汚染の影響を受けやすく、微小粒子の侵入に対する抵抗力も弱い。今回の発見は二酸化窒素濃度がEUの基準値を超えるロンドン市街地にとって特に重要である」とコメントしている。

英国の糖尿病研究主任マシュー医師は、今回の研究はいくつかのモデルと仮説に基づいて構成されており、研究量対象は少数の子供だけであるとし、今後、さらに多くの研究により、この関連性を実証する必要があると指摘している。

 (翻訳編集・市村了)