教育革命

ビル・ゲイツも嫉妬する、無料の教育サイト創始者の才能

コメント

「誰にでも無料で、どこにいても、世界水準の教育が受けられる」との理念で、5000本以上の教育ビデオを公開するサイトがある。サイト創設者で数学の天才と呼ばれるバングラデシュ出身の男性は、「価値10億ドル」とさえ試算される教育ビデオの有料化を頑なに拒む。その才能と道徳観はビル・ゲイツをも嫉妬させるほどだ。

バングラデシュの貧しい家庭で生まれたサルマン・カーン氏は、後に米国移民となる。数学の才能を開花させてマサチューセッツ工科大学(MIT)に合格。2つの学位を取得したのち、ハーバード大学で修士課程を取得した。

 無料教育サイト公開のきっかけ いとこへ数学指導

カーン氏は2004年、親戚の頼みで米ニューオリンズに住んでいた従姉妹の数学指導をまかされた。カーン氏の住むボストンから4000キロも離れた場所に住む従姉妹に教える一番良い方法として思いついたのが、インターネットでカメラを通じて教えることだった。

カーン氏の指導はわかりやすく、明確でイキイキとしていたため、従姉妹の成績はぐんぐん伸びた。やがてカーン氏は、効率よく教えるために、10分内で一つの概念を説明するビデオをたくさん作成し、さらに、誰にでも見られるようにインターネットで無料公開した。

評判を呼んだカーン氏のビデオの学習内容はますます広がり、小学校の算数から高校の微分積分、また大学レベルの高度な数学にまでいたる。カーン氏は1年間で数学の概念を説明する4800本のビデオを作成し、大きな関心を集めるようになる。

カーン氏は「誰でも、どこにいても無料で学習できる」との理念のもと、2006年に教育NPO法人「カーン・アカデミー」を設立。サイトの月間訪問者数は500万人にのぼる。一つのビデオ・プロジェクトの成功例となった。

米国では、2万もの学校機関がカーン・アカデミーの数学教育ビデオを教材として活用している。

 10億ドルの誘惑にも応じない

カーン氏のプロジェクトの注目度をねらい、多くの投資家や企業が、カーン氏が会社を設立し、ビデオ再生料金を取るよう促したという。「推計10億ドルを手にすることができる」との甘い言葉がかかった。

2012年、カーン氏は米雑誌「フォーブス」の表紙を飾る。同誌はカーン氏のビデオについて「1兆ドルのビジネスチャンスがある。アップルでさえ7000億ドルを超えていない」と評した。

しかし、カーン氏は頑なに有料化を拒んだ。「無料の教育の提供を続ける。お金を取ったら、多くの発展途上国の子どもたちは学習できなくなってしまう」

 

 ビル・ゲイツも嫉妬する才能 Googleも支持

マイクロソフトの創始者ビル・ゲイツ氏は、カーン氏の才能と理念に賛同する一人。ゲイツ氏は、演説動画サイト「TED」でカーン氏が演説した後、壇上にあがり、自らの子どもへの教育秘話を明かした。数学のある難しい概念を、多くの時間を費やして教えても、あまり理解されなかったが、推薦したカーン氏のビデオを見たら、わずか12分ではっきり理解したという。「君には嫉妬するよ」とゲイツ氏は言った。

ゲイツ氏は「もっと多くの人がカーン氏の知識を学べるといい」「これは(教育)革命だ」と述べ、カーン・アカデミーに150万ドルを教育援助資金として寄付した。

グーグル(Google)もカーン・アカデミーの運営を支えるため、200万ドルの奨励金を出している。他にも、投資家から数十万ドルが送られている。

 充実した科目 日本語音声・字幕つきも

カーン氏は支援金を使って、科目と、翻訳言語の拡充を図った。多くの専門家の支持もあつまって、現在は歴史、健康、看護、医学、政治経済、物理、科学、生物、天文、公民、芸術史、音楽、プログラミングなどの科目がある。原文の英語サイトは、スペイン語、ポルトガル語、フランス語、ドイツ語、中国語、日本語など多数の言語の音声・字幕がつけられた。

カーン氏はハーバード大学在籍中に出会った女性と結婚し、現在は6歳の息子と3歳の娘をもつ。カーン氏の理念はとてもシンプルだ。「私はビデオの中の先生であり、わたしの子供をふくめて全世界の子どもたちに等しく良い教育を受けて欲しいと願う、ひとりの父親だ」

カーン・アカデミーは全世界に公開され、全ページには全く広告が掲載されていない。シンプルで洗練されたデザインは、勉強への集中力を高める。無料の学習にこだわる、カーン氏の理念が伝わってくる。

日本では、カーン・アカデミーのオフィシャルパートナーとして、GEJプロジェクトが動画の日本語字幕、吹き替え付きを公開している。

(翻訳編集・佐渡道代)