酒に酔って王妃の服を引っ張った臣下の結末は

荘王(そうおう、?~紀元前591年)は、ある夜、臣下たちを宴に招いた。皆、心ゆくまで酒を飲み、多くの者が酔った。宴もたけなわの頃、正殿のロウソクが風に吹き消された。その隙に、ある臣下が王妃の服を引っ張った。王妃はすぐさまその者の冠の房を引きちぎり、荘王にこう言った。「ロウソクが消えた隙に、私の服を引っ張った者がいます。私はその者の冠の房を引きちぎりました。ロウソクを灯しさえすれば、それが誰だかすぐわかります」。すると、荘王は、「私と酒を飲むのに、冠の房をはずさないとは何事だ」と言って、皆に冠の房をはずさせた。荘王はそこでロウソクを灯し、先ほどと同じように、臣下たちと心ゆくまで酒を飲んだ。

後に、呉国が兵を挙げて楚の国に攻めてきた。楚の国に、戦闘のたびに先陣を切って戦い、敵陣に攻め入って敵兵を打ち破る者がいた。そして、ついには、敵の将校の首を討ち取って荘王に献上したのである。荘王は不思議に思い、その臣下に、「わしはこれまでお前を寵愛したことがないのに、お前はなぜわしにこれほどまでに尽くしてくれるのだ」と尋ねた。すると、その臣下は、「以前正殿で冠の房を無くしたのは私です」と答えた。

あの宴のとき、その臣下が酒に酔って礼を失したにもかかわらず、荘王は寛大な心で、それを咎めることも無かった。彼は、それをずっと深心に留めており、荘王の寛容な振る舞いに報いるために、身を呈して敵を退けたのである。

荘王はこのように、寛容で思いやりのある心を持ち、他人の些細な過ちを咎めなかったことから、ついには大業を成し遂げ、春秋五覇の一人となりえたのである。人は間違いを犯すものであり、皆欠点を持つ。寛大な心で他人を許すのは一種の美徳であり、そうすれば、憎しみを溶かし、悪縁を解き、敵を友に変えることができる。

(明慧ネットより)