【紀元曙光】2020年10月9日

今は亡き名優ジョン・ウェイン(1907~1979)。
▼彼が監督・主演した映画に『アラモ』(1960)がある。映画の題材となったアラモの戦いは1836年の早春であった。その前年から、メキシコの支配下にあったテキサスが分離独立の意思を示して、戦いが始まる。翌年2月、サンタ・アナ将軍が率いる6千のメキシコ軍が、アラモ砦に立て籠もるテキサス独立派とそれを支援する義勇兵を包囲し、攻め掛かる。
▼わずか2百人ほどのテキサス軍は、必死の抵抗で13日間を持ちこたえるが、味方の援軍はなく、全滅する。アラモの戦いは敗れた。しかし、彼らの勇姿に鼓舞された独立派はその後の戦いに勝利して、ついにテキサス共和国の建国をみる。
▼映画のなかでジョン・ウェインは、テネシー出身の国民的英雄デビー・クロケットを演じている。やはり、いい。その役柄に合っているのはもちろんだが、アメリカの魂のような人物像をシンボリックに演じきれるのは、数ある米国人俳優のなかでもジョン・ウェインをおいて他にはいなかっただろう。
▼「ソ連の共産主義者に、アメリカの魂を見せてやる」。仄聞するところによると、監督でもあるジョン・ウェインは、この大作映画にそんな熱い思いを込めたという。どこまで事実かは分からないが、米ソ冷戦の当時、アメリカの映画人のなかにもそうした士気は高かったに違いない。
▼ジョン・ウェイン。ロナルド・レーガン大統領。米国務長官マイク・ポンペオ氏を見ていて、ふと連想したのが、そんなアメリカンの「顔」である。皆さん、良いお顔をされている。