≪医山夜話≫(40)

簡単に探せる「天星十二ツボ」(1)

読者に簡単にできる実用的な鍼灸のツボをご紹介したいと思います。

 『黄帝内経』によると、人体には十二本の経絡があり、これは十二ヶ月と対応しています。「節」は三百六十五あって、これは一年の365日と対応しています。ここでいう「節」とは、人体にあるツボのことです。一方、『黄帝内経』には全部のツボの名前が記載されていませんでした。その後、歴代の補足によって、明朝に『鍼灸大成』ができた時に、三百六十一個のツボの名前が記載されました。

 人体にある三百六十一個のツボは十二本の「正経」、および「奇経」の任、督脈に分布しています。各経脈に分布するツボの数はそれぞれ異なります。例えば、膀胱経に分布するツボは六十七個と一番多く、一方で心経と心包経にはツボの数が最も少なく、それぞれ九個あります。これほど多いツボを、臨床ではどのように選んで使っているのでしょうか。

 更に便利かつ有効的にツボを使うために、明朝の馬丹陽は「十二穴」を抽出しました。『鍼灸大成』の中に「馬丹陽天星十二穴主治雑病の歌」が編纂されています。この十二穴はすべて「正経」に分布している重要なツボで、臨床効果が高く、この十二穴だけでほぼ全身の病気を治療できます。「十二穴歌」のはじめに、次のように書かれています。「十二穴とは足三里内庭曲池合谷、委中と承山、太衝と昆侖、環跳と陽陵泉、通里と列缺のことである。三百六十穴あっても、十二穴を活用すれば間に合う。十二穴に鍼をすれば、まるで湯をかけた雪が直ちに溶けるように、病気が消える。難治の病気でも、頑丈な鍵が開かれるようによくなる。この医術は、道徳心の高い人に伝授しても良いが、道徳心がない人に授けてはならない」

 古代中国では、技術の伝授は弟子が師を訪ねて伝授を願うのではなく、師が良い弟子を選んで伝授していました。ですから、歌には「この医術は、道徳心の高い人に伝授してもよいが、道徳心のない人に授けてはならない」と述べられ、良い人でなければ、伝授を受けることができなかったのです。

 十二穴のうち、八つは足に、四つは腕に分布しています。これらのツボの適応症をいくつか挙げましょう。

 1、足三里は、足陽明胃経に分布し、鍼灸が少し分かる人はほとんどこのツボを知っています。とても重要なツボで、病気治療のほか、養生の効果もあります。歌は「三里膝眼下、三寸二筋間」といって、「足三里」のツボの位置を説明しています。膝蓋骨の下方に内外二つのくぼみがあり、これを膝眼と言います。足三里は外側のくぼみの下に三寸、脛骨の外縁から一横指ほど離れるところに位置しています。

足三里と内庭

 

 

 足三里は胃の冷えを治療するための主要なツボで、また腹満も治療できます。更に足の腫れ、膝と脛骨あたりの痛み、風邪、虚弱と過労、消化不良、水代謝の異常なども治療できます。

 足三里はまた養生のツボでもあります。足三里に鍼灸すれば、視力減退や老眼に効果があります。私自身の経験では、足三里の鍼灸は目に良いだけでなく、足も強くなって、長時間の歩行や山登りの持続力もアップできます。また「健康を保ちたければ、足三里に常に灸瘡を残そう」という説があり、つまり足三里に頻繁に灸をすえ、灸瘡が常にある状態を保てば、血液循環を良くし、高血圧を防止できます。

 2、内庭は、足陽明胃経にあり、足の第二と第三指のつけねの真下五ミリのところに位置し、四肢の冷えを治すには一番効果的です。ほかに、蕁麻疹、喉の痛み、頻繁に出るあくび、上の歯の痛みなどにも効果があります。経絡異論から、下の歯は手陽明大腸経、上の歯は足陽明胃経と関連しています。従って、内庭は上の歯の痛みに効果があります。そのほか、虚弱体質で食欲がない場合にも、このツボが使えます。

 3、曲池は、手陽明大腸経のツボです。取穴法は、肘を少し曲げて、肘横紋の外側の頭にくぼみができる場所です。このくぼみが曲池です。曲池は肘の痛み、脳卒中後遺症による半身不随、腕に力が出なくて曲げられない症状などを治療できます。腕は力を出す時、大腸経の筋肉を使うので、大腸経に問題が生じる時、曲池に鍼をすると効果があります。また咽喉の腫れ、発熱、蕁麻疹にも曲池が使えます。曲池は免疫機能の改善に効果があります。

 4、合谷は、手陽明大腸経のツボです。親指と人差し指の間の「虎口」の上一寸のところに位置します。頭痛、顔の腫れ、口あたりの不具合を治療できるほか、マラリア、虫歯、鼻血も治療できます。更に歯ぎりしがひどい時は、合谷に鍼を五ミリ刺し入れたら直ちに効果があります。

 注意点としては、妊婦の合谷を下手に触ると流産を招く危険があります。宋の時代に医学を好む皇太子がいて、ある日、彼は妊婦の脈を診て、胎児の性別を判断しました。この判断が正しいかどうかを確かめるために、妊婦の腹を切開しようとしました。随行の医師の徐文伯が皇太子を止め、鍼で妊婦の合谷と三陰交のツボを刺したら、無事に出産しました。妊婦の合谷と三陰交に、下手に鍼をしてはいけないのです。

 

 

 

(翻訳編集・陳櫻華)